23
「ほっほっほ。要たん、腰まわりエロすぎ。」
「奈々、覗かないでね。後、その笑い方へんだよ?」
奈々の選んだ服を試着室内で着ているのだけど、何故か覗かれている。
お店の奥まった通路に試着室が並んであるため、用の無い人以外はいなくて空いている。
「その凶器のデカさで、その腰は反則だと思うわ。あ、足、触っていい?」
「駄目。っていうか、真由美も見ないで欲しいんだけど……。」
カーテンの隙間から二人は顔だけ突っ込んできてる。
「幸と裕也は覗かないでね。流石に恥ずかしいから……。」
「覗かないよ。捕まっちゃうし。」
「さっさと着替えろよ。次からは馬鹿女どもを捕まえておく。」
「なにぃ?引っぺがしたいだと?変態さんめ!!」
「裕也がそんな事を言うだなんて……。そんなに私の裸が見たいの?」
「うっぜぇ……。なんで自信満々に言ってんだこいつ?」
「私だって、そこそこスタイル良いわよ?」
「裕たん見てみたいの~?やっらし~。」
「うっぜぇ。幸、何とかしろ……。」
「無理無理。でも実際、2人ともスタイル良いと思うよ。」
「幸たんもか!?エッチな目で見ないで!!」
「幸……、あんたまさか……。」
「ち、違うよ!?」
「動揺してんじゃ~ん。見たいんなら見せたげよっか?」
「あとで何言われるか分からないから……いいよ。」
「そんな事言って~。見たいんでしょ?幼馴染の成長具合を~?」
「いいってば!!裕也何とかしてくれ!!」
「普段見捨てられてんだ。やなこった。」
「敵しかいない……。」
とりあえず、着替え終わったのでカーテンを開ける。
シャツにロングのスカート。
シャツはピンクと白のストライプで、スカートは赤と白の柄だ。
「あんまり虐めちゃ駄目だよ。僕も元は男だからわかるんだけどさ。」
「「おおぉ。」」
「ほぉ。」とか「へぇ。」とか、男性陣からは感嘆の声が上がってる。
「色的にだけど、僕にはあんまり似合わないと思うんだけど……。」
「そんなこと無い無い。似合ってる。」
「良いわね。これは評価できるわね。」
「普段の要からは想像できないから選んでみたけど、良いと思うよ。」
「似合ってるぞ。」
「あ、ありがと。皆にそう言われると……気恥ずかしいね。」
選んだのは実は幸。
幸自体もオシャレだから、こういうの得意なんだろうか?
皆文句無しの満点評価だった。とりあえず購入候補。
「次行ってみよー。」
そう言って奈々が試着室に入ってきた。いや、なんで?
「あ、奈々。ずるいわよ。」
「もう脱いでるから開けちゃ駄目~。」
そう。既に奈々に脱がされている僕がいる。
なんかもう、諦めるしかないかな……。
脱いだ服を綺麗に畳んでくれている。こういう所は素直に嬉しいんだけど……。
「次はこれだっけ?」
「それでいく?Aラインのワンピース。真由美んの選んだ奴だね。」
「絶対似合うと思うわよ。ただまぁ、腰の細さをアピールしきれないのがちょっと気がかりだけど……。」
スポッと着れるから楽でいい。ネイビーカラーで目立たないし。
「いや~目立つと思うよ?」
「そうかな?汚れとか目立たないと思うよ?勿論、エプロンは着るけど。」
「そうじゃないよ?そうじゃないんだよ?」
「?」
腰辺りに付いている帯を巻いたら出来上がり。
前で蝶々結びで良いのかな?
「どうかな?」
「うん、すっごい似合ってる。御開帳~。」
奈々がカーテンを豪快に開き、裕也が真由美の頭を押さえてる姿が見える。
幸は隣で笑っているけど、あんまりいい絵じゃないよね。
「裕也、放してあげて。」
「ぶっふ。真由美ん何してるの!?」
「裕也にいきなりこうされてるのよ。見に行くくらい、別にいいでしょ?」
「お前、馬鹿か?覗きに行かせると思ってんのか?おい、馬鹿女も出てこい。」
「嫌だよ~。私は畳むお仕事があるから~。」
「ん~。色合いが……、もう少し明るい方でも良いと思うんだけど……。」
「ん?そうだな……。何か微妙……。」
「何だと!?男どもが……そそられないの?」
「なんだよ、そそるって。」
「ほら~。胸が強調しがちだけど、腰の細さも分かるでしょ?」
「却下だな。」
「ははは、もしかしたらブルーの方が良いかも。」
「それだと、若者感って感じが……。いや、でも……う~ん。」
唸ってる真由美を置いて、着替え直し。
合計で6点満点中の4点。僕は着易いので評価している。
「後は~。って、何これ?タンクトップじゃん。」
「奈々じゃないなら、裕也かな?楽そうで良いね。」
「ダメダメ。裕たんアウト~。」
「何でだ?似合うと思うぞ?」
「あのね~。公然でこれ着たらさ、要たんがやらしい目線の標的になっちゃうよ?」
「そうかな?そうはならないと思うよ?ちょっと肌寒いかなってくらいだし。」
「…………。」
裕也は黙りふけて考え込んでいる。
まぁ、せっかく選んでくれたんだし、着てみよう。
「奈々、着てみてから考えようよ?」
「え~。要たんが言うなら、そうしようか?」
という事で着てみる。
深いグリーンのタンクトップと、ゆったりめのブルーのカーゴパンツ……かな?
少し胸が苦しい気がする。ワンサイズ大きいのが良いかな。
「要たん、マジヤバ……。」
「え?似合ってない?」
「そうじゃ無いよ?似合って入るんだけど、そうじゃないんだよ?」
「?」
「……まぁ、うん。見てもらう方が良いんじゃないかな?」
「?」
奈々がAラインのワンピースを畳み終わると、カーテンを開く。
「ちょ!?要!?」
「え?やっぱり似合わないかな?」
「似合ってるわ、でも、そうじゃないんだけどね!?」
選んだ本人の裕也と、幸は少し顔を逸らしている。
少し顔が赤いけど、僕の格好は恥ずかしい恰好なのかな?
「あ~、似合わないならしょうがないね。」
「いや、似合わなくはないんだ……。ただ……その、強調されすぎているというかなんというか……。」
「選んですまねぇが、これは無い……。」
「そうよそうよ。裕也の思考が手に取るように分かるわ。どうせむぐ……。」
「次!!兄貴、次だ!!」
裕也が真由美の口を塞ぎ、真由美がムームー唸ってる。良いのかな……。
カーテンを閉め直し、最後の試着。
「じゃじゃ~ん。あたしが選びました。ロングパンツにノースリーブタイプのワンピース。インナーは既存でも良いと思うし。」
「でも、お高いんでしょ?」
「ふふふ。何とセール品で安く仕上がってるんですよ。まぁ、着てみてね。」
今日着ていた白のシャツをインナーにする。
黒のロングパンツに緑のワンピース。羽織る形だからこっちも楽。
「大人の女性をコンセプトにしたからね。要たん似合ってる~。」
「そうかな?オシャレって良く分からないよ。」
「ちょっとずつでも知ってもらいたいんだけど……。なんならあたしが全部やってあげるよ。」
「そう?ありがと。奈々。」
「モチ。親友だからね~。さあ、御開帳~。」
またもやカーテンが勢いよく開かれる。壊れないか心配だ……。
「おお。」って声が上がる。
「良いね、似合ってるよ。同じ高校生徒は思えないね。」
「ムームー!!」
「裕也、離してあげて?流石にマズいと思うよ?」
「おう。……兄貴、似合ってる。」
「ありがと。」
「ぷぁ。裕也、あんたね。か弱い女性になんてことするのよ?」
「か弱くは無いだろ?図太いの間違いだ。」
「はぁ!?筋肉ダルマが、言うに事欠いて図太い!?あんたの無神経の方が図太いでしょうが!!」
「うっざ。本当の事を言ってんだろうが。てめぇのほうが神経図太いんだよ。」
「まぁまぁ。真由美も落ち着いて。裕也も、な?落ち着けって。」
「ぐっ……。まぁ、私の方がお姉さんだから、今は見逃してあげるわ。」
「ガキだろ(ボソッ)。」
「何か言った?今、何か言ったよね!?」
「はっ。」
「……は~ん、良い度胸ね。要、すっごい似合ってるわよ。ところでね?裕也の部屋に昨日入ったんだけど~。」
「おい!?てめぇ、ふざけんなよ!?」
「ちょっと、あんたの馬鹿力、洒落にならないんだけど?乙女の柔肌を傷つける気?」
「何が乙女だ!?人の弱みに付け込む奴が、乙女なわけねぇだろ!?」
「放しなさいよ。少し要とお話しするだけじゃない。」
「いいや、放さねぇ!!」
「なに?告白のつもり!?それで惚れられるとでも思ってるの?」
「違ぇ!!ってかうぜぇ!!自意識過剰過ぎるだろ!!」
「2人とも落ち着けって。店の中だぞ!?」
カーテンを勢いよく閉める。購入候補だね。
とりあえず着替えて2人を止めようか。店員さんが来ちゃうし……。
何とか幸に止めて欲しいけど……、無理だろうね。
「幸たんじゃ厳しいだろうね~。」
流石親友、分かってるね。