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「要たん、遊ぼ―!!」
昼食後に玄関から大声がしたと思ったら、半ば無理矢理連れられてショッピングモールへ連行された。
メンバーは奈々、真由美、幸、そして裕也も僕と同じで連行されてる。
「今日はショッピング!!男どものセンスを磨け!!」
「奈々のテンション高いね。」
「そうだな。裕也もお疲れさん。」
「どうでも良いが……。なんで俺まで連行されたんだ?」
「そりゃ、裕也に服を選んでもらうためよ。」
「はぁ?面倒臭ぇ。」
「オシャレしたい女の子がここにいるでしょ?3人も!!」
「僕も含まれてるの?」
「特にって感じね。あんまり服も持ってないでしょ?それに……ねぇ。」
「あぁ、俺もそう思う。流石にジーンズにパーカーはちょっとな……。」
「変かな?別に色合いはおかしくないと思うんだけど……。シンプルで無地だし。」
「要たん。無頓着というかなんというか……。前々から言おう言おうって思ってたんだけどさ、もうちょい素材を生かそ?」
「私でもそこまでじゃ無いわよ?何か持っておいた方が良いわ。」
「だな。……何で俺の昔着てたやつ着てるんだよ。」
「勿体ないし、頂戴良いサイズだからね。」
「おやおや~。独占欲?」
「あらあら~。彼シャツ的な?」
「……行くぞ。外まで来て面倒なのは御免だ。」
「はは。昨日もお疲れさんだったな……。」
そんなに変かな?あまりファッションとか気にしないから、分からない。
奈々は、いかにも女の子って感じのファッションで白のワンピースを基調に整えてる。
真由美は丈の長い薄緑のスカートに白シャツを着ている。
2人とも、外見に合ったオシャレな感じだ。
その2人に言わせたら、僕の格好は駄目らしい。
モール内を少し散策しつつ、目的地まで歩いていく。
道中、裕也が2人に揶揄われているのを尻目に、幸が先導してくれる。
「要もさ、もう少しだけ服には気を遣った方が良いと思う。」
「そうかな?動きやすいから気に入ってるんだけど?汚しちゃっても平気だし。」
「あ~、うん。でも、友達がこれから増えるだろうし。変に思われたくないだろ?」
「う……うん、まぁ。」
「俺が言うのもなんだけど、女子高生になったんだからさ。少しはオシャレを楽しんだらいいと思うんだ。」
「う~ん。あんまり考えたこと無いね。」
「だろうね。その辺り、お父さんも心配してたよ?」
「え?そうなの?」
「ああ。昨日その事を話してた。」
「……僕がいない時にそんな事話してたの?」
「まぁね。俺はあんまりセンス無いけど、似合いそうなの選ぶからさ。」
「……お願いするよ。」
まさかの、お父さんかもダメ出しが出ていた……。
ええ……そうなんだ……。ちょっとショックなんだけど。
「あ~、ほら。見えてきた。まあ、予算を安めに仕上げるからここになっちゃったけど。」
「大手のとこだね。お客さんもいっぱいいるね。」
「休みだしな。何着くらいにしようか?」
「ん~?今はこれくらい持ってるんだけど……ホントは下着買いたかったんだ。」
「え?結構ある……。奈々、ちょっと来て。」
裕也の機嫌が駄々下がりになってる。
反面、真由美と奈々は凄く楽しそうにしてる。
「なになに~?」
奈々がトテトテと近づいてくる。
「要が下着を買いたかったらしいんだけど、どれくらいになる?」
「ん~?要たんっていつものとこで買ってる?」
「うん。そうだよ。」
「じゃぁ、これくらいかな。」
指を二本立てて奈々が嬉しそうに答える。僕もそれ位だと思う。
「そんなにするんだね。じゃあ、予算はこれくらいで行こうか。」
「いくら位?」
「2万以内。でもそれ以下だともっと嬉しいかな。」
「2万もあったら大体いけるよ。まあ複数買うからどうなるか分からないかな?」
「皆のセンスに期待するよ……。経済面で。」
「オッケイ。真由美ん、裕たん、こっち~。」
真由美1人にかなり弄られていたのか、裕也は今にも吠えそうだった。
公衆の面前では大人しくしていてね……。
「それでは、要たんのコーディネート勝負をしたいと思います。」
「わ~。」
「はは。」
「「……。」」
「もうちょいテンション上げようよ~。特に裕たん。」
「なんで俺なんだよ……。」
「自分色に要たんを染めようぜ!?」
「うぜぇ。マジでうぜぇ。」
「まぁまぁ、裕也も落ち着いてね。2人ともあんまり弄っちゃ駄目だよ。」
「気分が乗ったら考えるわ。で、勝敗は?」
「まずはレギュレーション。各自上下で5000以内で選んでね。それから要たんに試着してもらいます。勿論、要たんも欲しいのがあったら選んでね。持ち点はそれぞれ1点。要たんは2点。合計点が高い人が優勝です。」
「景品は何かな?」
「幸?」
「要たんからほっぺにチュウでよろしくない?」
「「いいね。」」
「良くないよ!?恥ずかしい。」
「よし、それで行こう。スタート。」
奈々、真由美、幸とお店に突撃していく。
僕と裕也は置いてきぼりで、その場に取り残されていた。
僕は3人を見送った後、裕也の様子を窺う。
少し考えこんだような表情で立っていた。
「あ~、裕也。頑張ってね?」
「え、ああ。」
「流石に親友でもキスは恥ずかしいからさ。しないとは思うけど、念のため……ね。」
「…………ああ。」
裕也らしくない、パッとしない返事を聞いて少し不安になる。
こうなれば自分で選んだもので……、多分無理かな。
少し重い足取りでお店へと2人で向かう。どうなる事やら……。
お店に入って裕也と見て周る。
結構大きいお店だからか、品揃えも豊富だ。
あっちの方が気易そうなものがあると思って、そっちに行こうとしたら裕也に止められる。
「兄貴、あっちは男物だからこっちだろ?」
「え?あ、そっか。」
服を買いに来ること自体久しぶりだったので、間違えてた。
そうだった。僕は今、女性だったんだ。
レディースと大きく掛けられた看板の方へと歩いていく。
「色々有りすぎて選べないね。」
「そっから、選ぶしかないだろ。」
周りを見渡すと真由美と幸がいる。
何だか2人とも真剣なご様子。あ、奈々もいた。
「とりあえず、兄貴はどんなのが良いんだ?」
「え?どんなの……動きやすい方が良いかな?」
「…………。」
「裕也、僕でも分かってるよ。だからその目は止めて欲しい。」
「…………。」
「本当かよ?って目も止めて欲しいな。辛くなってくるから……。」
「はぁ。とりあえず無難でいくか。普段スカートとか履かないだろ?」
「そうだね。制服くらいかな。」
裕也が取ってくれたのはデニムとシャツ。
お店でもとからコーディネートされていたものだ。
「あ~。そう言う方が楽そうで良いかな?」
「言っておくけど、そのジーンズも俺が履いてた奴だからな?完全に男物なんだよ。今の兄貴の服装。」
「……楽だし。」
「親父も嘆きそうだな。無表情で。」
「……何故?」
「なんとなくそう思うからな。」
察しが良いね、裕也。お父さんは嘆いていたらしいよ。
この格好、そこまで駄目なのかな?手直しもして、サイズは合わせてるけど……。
「まあ、なんでもいいから試着してすりゃ良いんじゃねぇか?勝負なんて無視しとけばいい。」
「折角のご厚意には甘えておくよ。ありがと。」
「兄貴は真面目過ぎだ。もう少し楽に生きたらいい。」
「真面目では無いよ。不真面目でも無いけど。」
「裕たんズルくない?要たんとデートみたいにしちゃってさ。」
「うぉ!?」
「奈々?もう選んだの?」
背後から奈々がいきなり話しかけてきた。手には洋服を何着か持ってる。
裕也がすっごいリアクションしてるんだけど……。そこまで吃驚するかな?
「いきなり話しかけんな。馬鹿女。」
「え~、裕たんずるいな~。あたしはもう選んだし、裕たんも選びなよ。要たん行こ~。」
奈々は僕の腕に腕を絡めてくる。
裕也を置き去りにして連行される。奈々ってこんなに力強かったっけ?
選んだのなら試着室に行けばいいのに、何故かぶらぶらと連れまわされる。
皆が集まってくる間、僕は奈々のおもちゃにされた。
奈子ちゃんも連れてきたら良かったのに……。




