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「松田先生。明美ちゃんって呼んでいいですか?」
「駄目です。学校では礼節を学んでください。社会に出て、礼儀は大切ですよ?」
合場くんアウト~。
「松田先生。笑ってください。」
「何故でしょうか?それと質問ではありませんよ。」
加藤くんアウト~。
「松田先生。休みの日は何をされてますか?」
「プライベートを詮索するのは感心しません。女性にしてはいけない質問ですよ?気を付けてください。」
深石君アウト~。説教のおまけ付き。
「ソモサン!!彼氏はいますか?」
「説破。繰り返しますが、プライベートの詮索は感心しません。また、その質問に対して、教員である前に一人の人間として理解しがたく思います。知りもしない他人の恋路が気になりますか?親しい人でなければ、そっとしておく事が大事です。そして、他人よりもまずは己、それ以前に勉学に励んでください。」
飯田くん撃沈。説き伏せるというか、押し潰した。
男子生徒の声が無くなってしまった……。
「はい。松田先生よろしいですか?」
「何でしょう、高瀬くん。」
「最近流行りの映画なんですが、「貴女の傍に」という映画を見られましたか?見られたのであればネタバレの無いように感想を聞きたいです。」
「……申し訳ありません。見ていないのでお答えできませんね。」
「そうですか。友人から聞いたのですが、感動できる映画らしいのです。よろしければ鑑賞してください。」
「ありがとうございます。機会があれば見てみますね。」
「「「おぉ。」」」と男子生徒から感嘆の声が上がる。
アプローチの方法を変えろ、という幸なりのアドバイスだ。
流石はイケメン。伊達じゃ無いね。
「やるねぇ、高瀬くん。」
いつも間にか椅子に座っていた東先生が親指を立てている。
さぁ、男子生徒はどう出るか……。
……誰も続かないの。
ほら、東先生もあれ?ってなってるよ。
幸もあれ?ってなってるよ?
松田先生は……いつものようになっちゃってるよ。
「は~い。良いですか~?」
「はい、園部ちゃん!!」
誰も続かないからか、奈々が手を挙げた。何を聞くんだろう?
「松田先生。一昨日の話なんですけど~。」
「はい。何か?」
「我が親友の弟の隠し持っていたえっちぃ本の中身、何で分かったんですか?」
「!?」
「ちょぉっと!?奈々!?」
「ヘイ、親友。カモン。」
奈々に手を引かれて前に行く。何で!?
松田先生の傍まで行き、円陣を組むようになった……。
(な、なんてこと言うんですか!?)
(ちょっと、奈々!!なんてこと言うの!?)
(え~。だってさ。唯一さ、松田先生が正解したんだもん。気になるじゃん。)
(そ、それはですね……。その……。)
(あ、ちなみに要たんは内容を知りません。)
(えっちぃ本ってだけは知ってる。年頃だもん、持ってるとは思ってたし。)
(面白そうだから来ちゃった。)
(あたしも混ぜろ!!)
何故か円陣に真由美と東先生が乱入してきた。なんで?
(そういや、奈々ちゃん。答え教えてよ。)
(え~。要たんも知らないし。言って良いのかな~?)
(う~ん。避けはしないと思うわよ?)
(どういう事?)
(えぇっと、その。弟さんは本当にいらっしゃるのですか?)
(いますよ。架空では無いです。)
(その……妹尾さん。大丈夫なんですか?)
(大丈夫とは?)
(要たん要たん。最近裕たんとぎくしゃくしてない?)
(してないよ?いたって普通……かな?)
(何で疑問形なのよ?何かしたの?されたの?)
(ささ、された!?されたんですか!?)
(松っちゃん。めっちゃ動揺してるじゃん。内容が気になる!!)
(ええ!?なに?なにかあるの?)
(あ~、奈々。言っちゃう?)
(言っちゃったほうが良いのかな~?その前に要たん、なにかあった?)
(え?昨日、ハグしただけだよ?奈々が奈子ちゃんにするみたいに。)
(ハグ!?ハグしたんですか!?姉弟で!?)
(へ?あ、はい。そうです。)
松田先生の顔が凄く赤いんですが……。
というか……、すごく食いついているような……。ちょっと怖いな。
あと、奈々と真由美のにやけ顔がね、ちょっとだけイラってする。
(何か可笑しいかな?普段の感謝的な、愛情表現的な奴だよ?)
(ど、動機はどうであれ……あまり良くありませんよ!!)
(へ?そうなんですか?)
(松田先生。大丈夫ですよ。裕たんヘタレだし。)
(そうそう。昨日も弄ってきたけど、ヘタレどころかチョロいだけです。)
(……裕也すっごい怒ってたよ?)
(形だけでしょ?今日も行くから。)
(あ、あたしも行く~。何時から?)
(20時くらいにしましょ。油断してる時に行くわよ。)
(止めてあげてよ。可哀想だよ?)
(ホントなら……やめておくわ。)
(え?すっごい気になるんだけど?真由美ちゃん教えて教えて。先生超知りたい。)
(ひ、東先生!!破廉恥ですよ!!)
(え?何が?松っちゃん、なんで破廉恥なの?)
(え?そ、それは……その……。)
松田先生の顔がどんどん赤くなっていく。
昨日の裕也の表情を思い出してしまうなぁ……。
何だろう?僕もすっごい気になるんだけど……。
教室内がガヤガヤとざわついてきた。皆、気になるんだろうな。
(こ、きょ、今日はここまでにしましょう……。)
(へいへい。松田先生。言っちゃいなよ~。)
(言ってしまった方が楽になるわよ?松田先生。)
(松っちゃん吐きな。何を想像しちゃったんだい?吐いちゃえ。)
(うぇ!?そ、その……。)
(松田先生。大丈夫ですか?具合が悪そうですけど……。)
(要たん……。そのままの要たんでいてね?)
(え?どうしたの?)
(……私らの方が汚れてない?)
(まぁ、大人なんてこんなもんだよ?モチ、松っちゃんもね。)
(…………。)
「ほいじゃあ解散。おまんら席着け~。」
「「は~い。」」
「えっと……、松田先生、保健室行きます?」
「だ、大丈夫です……。そ、その……はい。」
「……分かりました。今日は早めに休んでくださいね。体調管理は大事ですよ。」
「……はい。」
「よーし…………、後1分。いいか~。補導とかされるなよ~、夜遊びはほどほどに~。」
「せんせー。何話してたのか気になるんですけど……。」
「……いいか。松っちゃんはね、初心なんだ。だから下ネタは厳禁な。気を付けろよ~。」
「「「?」」」
就業のチャイムが鳴り響く。
それに合わせて東先生が大きく手を叩く。
「ハイ、かいさーん!!また来週!!遅刻すんなよ~。」
先生の言葉を皮切りに、帰る人は教室を出ていく。
東先生は松田先生を連れて出ていく。大丈夫かな?
「なぁ、要。何を話していたんだ?」
「さぁ?僕も良く分からない。真由美と奈々が言葉足らずで理解し合ってたけど……。」
幸に聞かれたけど……。正直良く分からない。
帰り道に二人で奈々と真由美に聞いたけど、はぐらかされた。
そして本当に20時に来て、奈々と真由美は裕也を怒らせていた。
僕とお父さんと幸は、リビングで温かいお茶を飲み、のほほんとしてた。
裕也から寝る前に、恨み言でも聞かされるかな?




