15
お昼も食べ終わり、午後の授業開始。
意外にお弁当を持ってきている人が少なかった。
ここ王院高校は学食と購買が結構充実している。
レパートリーも多いし、味も良いらしい。幸が言ってた。
「そいじゃあパパッと決めちゃいますか。先ずクラス委員。挙手!!」
東先生が手を挙げているけど、誰も手を挙げない。
「おいおい。私達の僕になれるんだぞ~?嬉しいだろ~?やりたいだろ~?」
それを言われたら誰もやりたくないんじゃないかな?
僕は当然やりたくない。直ぐに帰りたいし。
「そうだな~。私が決めると可哀想だから……推薦か松っちゃんに決めてもらおうか?」
「え?」
不意を突かれた松田先生は変な声をあげる。
「推薦が良い人~?」
手を挙げる人はいない。
「いないね~。松っちゃん!!誰が良い?」
「ええ!?東先生!?」
「ほれ。誰が良い?言っとくけど、自発・推薦を蹴ってる以上恨みっこ無しね。」
笑顔でまぁ……。
「えぇと、東先生が決めてくださった方が良いのでは?」
「私?私は止めとく。そもそもどの役職だって誰でもできるしね。それ位なら松っちゃんの見る目を養ってあげたいんだよ。親心みたいなものさ。」
「……そう言って、責任を押し付けるのは違うと思うのですが……。新手の詐欺のですか?」
うんうんと何人かは頷いている。
「そんなこと無いよ。まぁ気軽にまずは生徒を見てごらん?」
「?」
「何人か顔を背けてるでしょ?」
「えぇ、まぁ……。」
「その子たち以外から選びなさい。」
「せんせー横暴です。」
「だーまらっしゃい。先生は権力を行使します。拒否権は認めぬ。」
「えぇ~!?」
「ようし。では反論した梨本ちゃん。誰が良いかね?」
「えぇ!?」
梨本さんに視線が集まる。
中々酷いことをなさる先生だ。
梨本さんは周りを見渡しては、唸ってしまう。
「選べる?選べないでしょ。それを肩代わりしてあげるんだよ。来年からは出来ないけどね。」
「す、すいません。」
「松っちゃん。どうだね?」
「えぇ……。」
ぱっと、目が合ってしまった。
「……妹尾さん。お願いできますか?」
嘘ぉ……。後ろの席から揶揄われるように背中を突かれる。
「え、あの……出来れば、辞退したいのですが……。」
「だめ~。決定。クラス委員は要たんに決定だ。前来て~。」
横暴だぁ……。心なしか、東先生の笑顔が深い感じがする。
言われた通り前に出る。視線が痛い……。
東先生の傍を通りと、「お返し。」っと言われた。くそう……。
「ほいじゃあ副委員を決めようか。誰か挙手!!」
意外にも結構な数の手が挙がる。
まぁ、楽をできそうではあるからね……。
「そうだね。比較的安泰ポジション、且つ内申プラスだからね。やりたいよね?」
何でこうブラックな発言をするんだろうか……。
「だ、れ、に、し、よ、う、か、な~。」
「先生。その決め方はどうかと思うよ?」
「うん?じゃあ、要たんは誰が良い?」
「僕は……女子?だから、男子の方が良いんじゃないかな?何かの時に、両方の意見を取り入れれるし。」
「ほうほう。若干淀んだ感が有るけど、それで?」
「ん~。幸、何で手を挙げてないんだい?」
「ん?要の友達作りを応援しようと思ってるからだな。」
「何それ?面白そうなんだけど、教えろ!!」
「東先生ストップ。幸も余計な事言わない。じゃあ……、八木くんにお願いしようかな?」
僕がそう答えるとみんなの視線は八木くんへ。
立ち上がっても変わらないね。
「分かりました。前に出て板書をすれば良いですか?」
「うん。お願いね。はい、要たん。選考ポイントは?」
「え?え~と。姿勢……かな?崩さないし。クラス委員って真面目に出来そうな人の方が良いと思ったからかな?僕は真面目じゃ無いし。」
「えぇ~面白くないな~。こういうのってさ、好きな人を選ぶもんじゃない?」
「好きな人はいないし……。というか、理由って僕さっき言ったよね?」
八木くんが松田先生から何かの紙を受け取り、黒板へ文字を書いていく。
字が綺麗で吃驚した。すごいなぁ。
「え~っと。それじゃあ、次は……何かな?」
「要たん、前に立つの慣れてない?」
「うん。後、要たんって止めて欲しいんだけど。」
「やだ。まあ、慣れてね。」
「嫌だよ。八木くん次は何かな?」
「うん?次は保健委員だ。男子と女子と一人ずつ。」
「はい。保健委員をしたい人はいる?」
何人かは手を挙げる。
それからの各委員を決めるのにはそんなに苦労しなかった。
複数人の手が上がった場合は、独断と偏見で決めさせてもらった。
僕は大雑把な性格だから。血液型もО型だし。
「後は、何かな?」
「最後は文化祭のクラス代表だな。」
「盛り上げたい人はいるかな?男女1人ずつ。」
奈々が手を挙げてくれた。男子はいない。
「じゃあ、奈々は決定だね。男子は~、誰が良い?」
「要たん、パクッちゃ駄目~。」
何だろう。イラっとする。
「……いないなら、加藤。やってくれ。」
「えぇ!?正吾、俺やりたくねぇよ。」
「決定しよう。」
「良いの?嫌がってるよ?」
「同じ中学出身で、俺が勉強を見てやったんだ。これくらいはしてもらう。」
「嘘だろ!?決め方雑過ぎるだろ!?」
成程。恩を返してもらう寸法か。
「じゃあ、加藤くん。お願いするね。」
「任して!!」
さっきまで嫌がってたんじゃないのかな?
「おいおい。あいつチョロいわ。」
「チョロくねーし!!」
弄られ役かな?頑張ってムード―メーカーになってね。
「以上で各委員の選考は終わります。東先生。」
「ん?そうだね。思いのほか早く決まったね。まだ時間あるし、好きにして良いよ?」
「は?」
「あの……。好きにとは?」
「その言葉通りだよ。いや~、他のクラスみたいにわいわいやって欲しいんだよね~。うちのクラス優秀過ぎ。」
「はぁ……。」
何を言っているんだろう、この人。
「折角のクラス代表だし。何かと話し易くしてもらった方が良いでしょ?人となりを知ってもらうのが一番だよ。」
意味は理解できる。
方法が厄介すぎる。
「は~い。八木くんに質問ありまーす。」
「え?あ、はい。」
「八木くんは何か部活してましたか?」
「俺は部活はしていない。3年間帰宅部だ。」
意外だ。何かしてると思ってた。
「何でそんなに真面目なんですか?」
「真面目にしろと教育されている。」
「硬い!!」
「何かおかしいのか?」
「いや、教育ならおかしくは無いよ?僕も犯罪はするなって言われてるし。」
主に裕也が。僕は巻き添え。
「極端すぎないか?妹尾さん。」
「そんなもんだと思うんだけど……。」
「ほら~。クラス委員へどんどん質問しな~。」
「彼氏彼女いますか~?」
「「いない(よ)。」」
「好きな食べ物は~?」
「「(特に)無い(かな)。」」
「八木くんに質問。好きなタイプの女性は?」
「晒し上げられそうだから黙秘だ。」
「つまんねーぞ、正吾!!」
「黙れ。」
「じゃあ、妹尾さんに質問。好きなタイプは?」
「タイプ?……考えたこと無いかな?」
「強いて言えば?」
「強いて……。」
「真面目に答えなくても良いと思うぞ?」
「ここで権力発動。要たんは答えなさい。」
「えぇ?ん~、お父さんみたいな人かな。」
「そこは弟君じゃないの?」
「裕也は違うかな。甘やかしたいタイプで……今の無し。忘れて?」
案の定、真由美、奈々、幸は笑い出した。
釣られて笑う人も続出。うっわ、言っちゃった……やっちゃった。ごめんね裕也。
「あの!!でかぶつを!?」
「あはははは、要たんサイコー!!」
「く、くく……甘える裕也か……。」
その後はチャイムが鳴るまで質問攻めだった。
主に我が家族関係で……。これ以上は黙秘します。
後、昨日の事を松田先生に告発しようと決心した。というか言っておいた。
松田先生が東先生に詰め寄ってた。
何か言いくるめようとしてたけど無意味に終わったっぽい。仕返し成功だね。