今は、違うよ
赤ちゃんがいない事に、いつまで苦しめられるのだろうか…。
俺は、六花にその答えを教えてあげられないと思った。
「巽君、そんな悲しそうな顔しないでよ!私は、今は違うよ!今は、子供がいる人も仲いいから」
「そうなんですね」
「そうだよ!だけどね、あの時は無理だった。死産した友達がいたんだけどね。凄い、いい言葉話してきたけど…。彼女一年経たずに妊娠して普通に出産したの!私は、結局赤ちゃん抱けたなら別にいいじゃんって意地悪な事思っちゃったの」
「仕方ないですよ」
「そうやって、言ってくれたのは、宮森と若い子達だったよ!いずみさん、いいんだよってね!そんな汚い感情持ってたっていいんだよーって!同性が好きな子とかもね!いいの、いいの。欲しいんだから仕方ないのって言ってくれて救われたんだよね」
いずみさんは、ハンカチを取り出して涙を拭った。
「いずみさん、辛かったんですね」
「そうだね!あの時は、地獄だったよ!でも、今は、凄く幸せ!子供がいない代わりに私は沢山の仲間が出来たから!同性カップルの子達と毎年旅行、行ったりして遊んでるから……」
「いずみさんは、治療で妊娠しなかったんですか?」
「したよ!五回」
俺は、驚いた顔をした。
「驚きすぎだよ!」
「すみません、知らなくて」
「話した事はないからね!みんな流産しちゃったから」
「悲しすぎますね」
「そうね!悲しかったよ。だって、妊娠したのに、何もこの手に残らなかったんだから」
俺は、何も答えられなかった。
「だから、さっきの話だよ!亡くしたって、この手に残った人の話は耳に入らないって話」
「そうですね」
「結局、本当に駄目だった人間の気持ちなんて妊娠出来た人にはわからないし、分かり合えないの。だから、私は今もそういう話は同性カップルちゃん達の子供に恵まれなかった子達にしかしないの!あの子達も、欲しいけど出来ないって嘆いてたから……。私も同じだよって一緒に泣いたの!男女だからって、赤ちゃんが必ず授かるわけじゃない。だから、私にはあの子達の悲しみや痛みがわかる!赤ちゃんを望んでるのに出来ない気持ち……。だからって、誰かの赤ちゃんは嫌なんだって!二人の遺伝子が混ざった子がいいんだって!それは、私もよくわかるから泣いたよ!一緒に……」
いずみさんは、俺の肩を叩いた。
「だからって、養子縁組をって言われた事もあったんだけどね!誰かの子供を私は愛する自信がなかった。幼少期、親に叩かれてたから……。だから、血が繋がっていない子供を愛する自信はなかった」
「間違ってないと思いますよ!俺は、いずみさんの考え」
「巽君、ありがとね!」
いずみさんは立ち上がった。
「巽君が、大切にしてる人に伝えてよ!今は、同じ場所をぐるぐる回ってるけど……。いつかは、本当の意味で前を向ける日が来るよって!だから、大丈夫だよって!それと、色んな気持ちを持ってていいんだよってね」
「わかりました。必ず伝えます」
「うん!じゃあ、撮影楽しみにしてるね」
「はい、よろしくお願いします」
「よろしくね!じゃあね」
いずみさんは、手を振って帰っていった。




