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欲張りになるよ。

ご飯食べながらたくさん写真を撮った。


食べれなかったのは、また冷蔵庫にしまった。


「あのさ、嫌じゃないならこれも撮りたいんだけど」


「これって?」


「あんたを抱き締めてるの」


「えっ?ダメでしょ?」


「思い出せるかなって…。抱き締めてもらった事とか。」


「そんなのSDにあったら、旦那さんがひっくり返るよ」


「それでも、撮りたい。」


俺は、真剣だった。


「どんどん欲張りになってるのはわかる。でも、あんたの不安感が出た時にその動画見て一人じゃないんだって思って欲しい。映画とってるぐらいに思えないかな?」


佐浜さんは、少し考える。


ダメだって言われてもひかないよ。


だって、佐浜さんは俺の香水で不安感が消えたって言ってた。


それって、あの日佐浜さんを抱き締めたからだよね?


どうしても、佐浜さんの不安感をなくしてあげたい。


その為に出来る事をしてあげたいんだ。


例え、人から見たら間違ってるって言われても…。


俺は、佐浜さんの力になってあげたい。


「わかった。」佐浜さんは、そう言ってくれた。


「じゃあ、撮るよ。」


「うん。向かい合ってていいんだよね?」


「もちろん。」


録画ボタンを押した。


フワッて抱き締めた。


俺と佐浜さんの同じ匂いの香水が混ざり合った。


「いい匂い。」一緒に言った。


俺は、少しだけ佐浜さんを抱き締める力を強めた。


ずっと、こうしていたい。


佐浜さんの心と俺の心がくっついている気がした。


出会わなかったらよかったなんて思わないよ。


出会う運命だったんだよ。


心が繋がってる関係。


この先、出会う事はないだろうと思う程に繋がってる。


「長かったよね。」俺は、ゆっくり離れた。


佐浜さんも抱き締めてくれていた。


「止めるね」そう言って録画を止めた。



「ごめんね。」俺が謝ると佐浜さんは首を横に振った。


「嫌じゃないから困るんだよ。」佐浜さんは俯いて言った。


「うん」


「巽君に出会って、心が修復した。だから、困るんだよ。」


「うん」


「でも、もう巽君を失いたくない。酷いこと言った日ね。日常が、静止画みたいだった。巽君が私に言ったみたいに」


「同じだったんだな。」


「うん」


「だから、失いたくないんだよ。もう、壊れたくない」


一度壊れた心を修復したから、佐浜さんは戻りたくないんだ。


もう一度壊れたら戻ってこれないのをわかってる。


そして、もう一度壊れたら旦那さんといれないのもわかってる。


だから、佐浜さんは壊れたくないんだ。


「ごめんね。泣くつもりなかったんだけど」スッーって佐浜さんの目から静かに涙が落ちた。


俺は、佐浜さんの涙を指で優しく拭った。


頬に手を当てる。


どんどん涙が溢れてくる。


ダメなのわかってるのに、俺は佐浜さんを胸に引き寄せた。


佐浜さんの頭を撫でる。


佐浜さんは、泣いてる。


ダメだ。


ダメだ。


俺は、この人を守ってあげたくなる。


俺に会うまで、どれだけの想いを抱えてた?


もっと一緒に居たら守れる?


嫌、俺といると佐浜さんは好奇な眼差しを向けられる。


佐浜さんの人生を、これ以上苦しいものにしたくない。


でも、触れてると欲張りになる。


抱き締める腕に力をこめる。


佐浜さんの傍にいれる人生は、どれだけ素晴らしいだろうか。


佐浜さんと歩く人生は、どれだけ素晴らしいだろうか。


どんなに願っても想っても、手に入らない。


俺は、今を捨てれないし失くせないし…。


jewelでいる以上、北浦巽でいる以上、佐浜さんの隣にはいれない。


佐浜さんは、ゆっくり俺から離れた。


「大丈夫?」


「うん。時間勿体ないよね。」


「ううん。大切な時間だから…」


「ごめんね。」


「謝らないで。」


「うん。」


「少しだけ休む?疲れたでしょ?」


「うん。」


俺は、毛布を取りに行った。


「休んで。」


俺は、佐浜さんに毛布をかけた。


「少しだけ」泣き疲れて、佐浜さんは目を閉じた。


俺、佐浜さんといるとどんどん欲張りになるよ。

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