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産まれてこなかったらよかった?

佐浜さんが、眠った。


俺は、立ち上がってビールを取りに行った。


三本にしとこうかな。今日は…。


佐浜さんと、初めてをたくさんしたいと思った。


友達がいないって言っていったけど、俺は佐浜さんの友達になれないだろうか?


佐浜さんといるのは、楽しい。


さっきだって、楽しかった。


多分、佐浜さんは末っ子なんだろうなって思う。


俺より年上なのに子供だ。


もっと居たい。


時間が過ぎるのが、もどかしい。


泊まっていってよ。何て言えない。


でも、傍にいると佐浜さんに触れたくなる。


ダメな事は、わかってる。


でも、進みたい気持ちが沸く。


多分、あの時拒絶されたのを引きずってるんだと思う。


心だけは、ずっと傍にいたい。


初めてだった、一人の時の俺を見せれた人


弱くて、脆くて、意気地無しで、泣き虫で、暗くて、マイナス思考で、そんな俺を初めて見せれた。


そんな俺を丸ごと受け止めてくれた。


佐浜さんは、いなくならない。


そう、確信した。


だから、俺もいなくならないよ。


どんな話を聞いても、どんな想いを知っても、全部佐浜さんだから



佐浜さんが、起きた。


俺は、近くに行く。


「大丈夫?不安感とか動悸はない?」


「大丈夫だよ。」


そう言って笑った。


「あのさ、一つ聞いてくれる?」


「うん。なに?」


「私さ、姉がいて。姉の妊娠中から父親が不倫してたみたいでね。私は、父親が不倫してるのに出来た子で。それハッキリ知ってから、自分の事気持ち悪いってずっと思ってて母親からは、父親は私の事可愛くないから、可哀想だからお母さんがあなたを好きでいるって言われてたからずっと。その理由がわかったから」


そこまで言うと佐浜さんは、泣いていた。


「私は、産まれるべきじゃなかったのかな?可哀想な子だったのかな?」


「あんたは、産まれるべきだったんだよ!少なくとも、俺はそう思う。それに、あんたは、可哀想な子なんかじゃないと思うよ。お母さんも、愛情表現が上手くなかっただけだよ。」


何だろう、今無性に、この人の頭撫でたくなった。


「俺には、わかんないけど…。お母さんも辛かったんじゃないのかな?大好きなお父さんが、別の人を好きで。それでも、家族が欲しくて。お姉さんに、弟か妹を作ってあげたくて。そんな時、あんたがお腹に宿って。お腹に宿ったあんたを産んであげたかったんじゃないのかな?だから、あんたは気持ち悪くなんてないよ。」


そう言うと、子供みたいに泣いていた。


「もしかして、子供の事もそれがあって引っ掛かってた?」


佐浜さんは、頷いて


「聞いてたけど、ハッキリ理解したのは8年前だった。父親が借金置いてなくなって、向こうの関係者に調べられて放棄するのに取り寄せた資料でだった。それが、引っ掛かってたのかも。母親は、病気がちだったから。言ってくれたんだ。あなたが小さく産まれたから私は生きてるんだよ。ありがとうって…。でもさ、その言葉よりその資料の事実の方が大きくて…。私、汚くて醜くいって思ってた。産まれない方がよかったんじゃないかって思ってた。母親になりたかったけど、怖かったのもあるんだと思う。」


そう言った、佐浜さんの涙を気づいたら拭ってた。


「お母さんが、あんたに言ったその言葉が全てだよ。あんたに産まれて欲しかったんだよ。あんたは、気持ち悪いとか、産まれてこなかったらよかったなんて思わなくていいんだよ。あんたは、ちゃんと、お母さんに望まれて産まれた子なんだよ。お父さんだって、あんたが産まれて幸せだったんだと思うよ。だから、大丈夫だよ。」


そう言うと、また佐浜さんは泣いた。


「ありがとう。何か、少し楽になった。家族に言っても、忘れたらって言われて、夫に話しても気にしないのって言われて…。誰にも言えなかったから。だけど、ずっと抱えてたから。」


俺は、佐浜さんの頭を撫でる。


「お母さんも、もういないんだね。」  


佐浜さんは、ゆっくりと頷いた。


「ゆっくりでいいから、色んな事話してよ。俺、ちゃんと聞くから。」


「ありがとう。」


そう言うと、佐浜さんは起き上がった。


佐浜さんの心は、それ以上に話してるのわかる。


でも、言えなかったんだと思う。


これ以上言葉に出来なかったんだと思う。






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