熱愛彼女
巽君は、スマホをスピーカーにして机の上に置いた。
「もしもし、何?」
「今日から、休みでしょ?何してんの?」
「何でもいいだろ?」
そう言いながら、カラオケの機械を触って音量を消した。
「何で?私達、TVの中では付き合ってるんだよ。」
「TVの中だけだよ。付き合ってないし」
「好きな人いるわけ?」
「いないけど…。」
「嘘でしょ、それ。」
「何で?」
「前に電話するって言った人に会ってるんでしょ?」
スゴイ、この人。
「会ってないけど。」
「巽、その人に会ってから雰囲気変わったって真琴が言ってたんだけど。」
「そう。」
立ち上がって、外出て行こうと思ったら手握られた。
いや、何で?
「おばさん何でしょ?相手。結婚してる人なんでしょ?そんなのjewel的にダメじゃん」
巽君が、私の手をギューって強く握る。
「だから、なに?そっちに関係ないでしょ?別れてんだから」
「あんなに愛し合ってたよね。私達。何がダメだったの?」
「ごめん、俺。今、忙しいから」
「何で?一人なんでしょ?」
「そうだけど、曲作りたいから」
「そうなの?別に今日じゃなくてもよくない?」
「あのさ、そっちと付き合う事はもうないと思う。でも、そっちがさ連絡とりたいって言うなら相手するから。でも、曲作る時は邪魔されたくない」
「あっそ。何でそんな事いうの?おばさんの為?」
「そんなんじゃないから。それに、その人の事そんな風に言うのやめて。」
「なに、それ?それって好きって事じゃん。」
「違うから…。もう、切るわ」
「じゃあ、またかけるから」
そう言って、電話が切れた。
「ごめん。」
巽君が、私から手を離した。
「大丈夫だよ。」
「ごめん。何かさっきの電話」
「キスマークとかの話するぐらいだから、そうだと思ってたよ。」
「そうだよね。でも、あんたには知られたくなかった。」
「電話スピーカーだったからね」
「ごめん。スピーカーにして」
「謝ってばっかだね。」
「あんな話されると思ってなかったから…。ごめん。」
「いいよ、いいよ。気にしなくて」
そう言った、私の顔を覗いて
「あのさ、香水とか一緒のつけるとかどうかな?」
「えっ?」
「そしたら、不安感とれないかな?」
そう言って、フワッと抱き締められた。
「ダメだよ。」
「少しだけ…ごめん。何か、きつくて…今。」
そう言われて拒めなくなった。
「めちゃくちゃいい匂い」
「これ、ずっと使ってる香水」
「じゃあ、これでいいよ。」
「ダメ。俺は、あんたと特別な匂いに包まれてたい。」
「特別?」
「うん。ダメかな?」
「ううん。」
そう言って、私から離れた。
「あんたはさ、つけなくていいから。嗅ぐだけでもいいからさ。さっきの俺、思い出して欲しい。旦那さんには、悪いけど。多分、あんたと俺さっき同じ気持ちだったよね?俺とあんた元は一つだったんじゃないかって思うぐらい幸せに感じなかった?」
「うん。わかるよ。言ってる事」
「でも、これはさ。それ以上の関係になるとなくなるよ。わかるかな?」
「わかる。」
「だから、俺とあんたはこのままが一番。」
「うん。」
「たまに、抱き締めたくなったらごめん。」
「あっ、それは」
「ごめん。もう会うのはこの休みが最後だから…。」
「それは、いいんだよ。会うのも、別にいいんだよ。」
「あんた、俺の事、弟ぐらいに思ってない?」
「それは…。」
「それでいいよ。俺、それぐらいのポジションがいいよ。」
「そうだよね。」
「うん。じゃあ、歌詞考えよっか」
「うん。」
「これは、失いたくないよっていけるかな?」
「うん、いいね。好きが違うんだとかは?」
「何か、ありかも。」
私と巽君は、歌詞を考える。
電話がなった。
「ちょっと待って。延長する?」
「うん。」
「お願いします。はい、二時間で。はい。」
そう言って、また隣に座る。
「じゃあ、次いくよ。」
「一つに混じり合うとかは?」
「いいね。触れ合う指先」
「溢れだした思いが…。」
「何か楽しいわ。」
「私もだよ。」
結局、朝になる前まで二人で歌詞を考えてた。
ドキドキもザワザワもしない、ただ暖かくてただ優しくてただ穏やかで、不思議な感情。
この気持ちは、何て呼ぶのかな?
この気持ちを、何て呼べばいいのかな?




