カラオケ
不安感は、少しマシになってた。
巽くんは、飲み物が、届けられて帽子を外した。
「お酒飲んでいい?」
「どうぞ。」
「ついてきてくれて、ありがとう。」
「最後だから。」
「もう、連絡とらないって事?」
「うん。」
「誰かに何か言われた?」
私は、首を横にふる。
「前も言ったけど、あんたとそんな風に終わるの嫌だから。」
「そんな事言われたって。」
ヤバイ。涙でてきた。
下を向いて誤魔化そうとしたら。
隣に座ってきた。
「あんたも同じ気持ち何でしょ?」
そう言って、顔を覗き込まれた。
「やっぱり、そうじゃん」
そう言って涙をぬぐわれた。
いや、どんなシチュエーションだよ。
「何で?そんな風にするの?」
「あんた見てたら、したくなる」
「どういう感情?」
「わかんないよ。ただ、泣いてたら涙を拭ってあげたいし。不安感が襲ってんなら、背中擦ってあげたいし。苦しくて泣きたいなら、抱き締めてあげたい。これが、何なのかわかんないよ。今まで感じた事ない。」
「よく、わからないよ。浮気になるよね。こうやってるのも…。」
「あんたが、そう思うならそうだよね。帰った方がいいよね。」
私は、首を横にふる。
「いいの?」
「うん。私もよくわからないの…。巽君の事、苦しめたくないし泣かせたくない。抱き締めてあげたいとも思うよ。でも、失いたくないし。男女の関係なんて望んでない。ただ、ただ繋がっていたいだけ。この気持ちが何なのかわからない。」
そう言ったら、笑顔になった。
「やっぱり同じ気持ちなんじゃん。よかった。何かって決めなきゃいけないのかな?ただ、繋がっていたい。それだけじゃダメなのかな?俺は、あんたが大好きで大切であんたには嫌われたくない。でも、あんたと付き合いたいかって聞かれたら答えはノーだよ。あんたも同じだろ?」
私は、ゆっくり頷く。
「だったら、この関係に答えを見つけるのは、やめよう。見つけたら、あんたも俺も苦しいだけだろ?」
そう言ったら、巽君は背中を擦ってきた。
えっ?暖かい。
残ってた、不安感が和らいできた。
「あのさ、俺。人生で初めてだったんだよ。男とか女とか関係なく。見守りたいって思った人。それに想像したんだ。あんたと結婚したいかって、そしたら喧嘩だって絶対するだろ?しない事なんてないと思うから…。嫌味だって言うし、そんな感じで離婚ってなったらってあんたにはもう一生会えなくて。それで終わり。そしたら、何か違うなって思った。俺は、あんたが死ぬ日まで見届けたい。あんたが、この先どんな人生を歩くか見届けたいって思ったんだ。意味がわかんないけどさ。」
巽君も、泣いてる。
「わかるよ。」
そう言ってハンカチ渡した。
「ありがとう。」
「少しでも、歌詞作らない?」
「そうだな。で、あんた一人でいれるの?」
「明日にならないとわからない。」
「じゃあ、明日不安感がとれなかったら電話して」
「それって」
「あんたの旦那さん帰ってくるまで、俺近くのホテルにいるからさ。あんたにこんな事してあげれるのもうないかも知れないから。休みと出張被るなんてなかなかないでしょ?」
「そうだよね。」
「だから、明日ダメだったらあんたが電話してきて」
「わかった。」
「じゃあ、歌詞作るか」
そう言って、巽君はスマホを取り出した。
「あっ、週刊紙に売るか?」って聞いてきた。
「売らないよ。」
「そっか、売らないよね」
「何、その胸に手を当てる動き」
「ホッとした動きです」
「何、それっ?」
「やっとちゃんと笑った。」
「そっちこそ。」
そう言って笑い合った。
「ねぇ、私たちの関係を歌詞にしてみない?」
「それ、いいね。」
「同じ人いるかもしれないし」
「うん。やってみようか」
そう言って巽君は、ペンと小さなノートを取り出した。
その時、ブーブー。
巽君の電話が鳴った。




