会いに行く
とりあえず、夜にはこっちにきた。あの人にかけたら、何とか場所を聞けた。
タクシーに乗り、あの人の家の近くの駅をお願いした。
しばらく走って、駅についた。
あの人は、まだ来ていなかった。
[つきました。]メッセージを送った。
俺は、帽子を深く被る。
あの人に迷惑かけてはいけない。
しばらくして、あの人がきた。
「待ちましたか?」
「いえ、大丈夫です。」
「どうしたらいいですか?」
「歩きますか?」
「はい。」
俺は、キャリーバッグ引きながら歩く。
どっかで、ホテルとればいいか。
どこ行けばいいかわかんないけど
とにかく、人がいないとこにしないとな。
「足、痛くない?」
「大丈夫です。」
「何か、体調悪い?」
「えっ?」
「何となく。そっちの手握りしめてるから…」
「あっ」
そう言うと手を緩めた。
「さっきの、普通じゃないって何?」
「あっ、えっと。」
少し動揺してる。
「私、不安感や動悸がよく襲ってて、家に一人でいれなかったんです。ずっと…。36歳の時にそんな自分と決別しようって決めて、ママになりたいなら負けるな。頑張れ、大丈夫、って自分に言い聞かせてやってみたら、一人で家にいれるようになって!すぐに、夫や家族に甘えるのもやめようって決めたら、動悸や不安感もだんだん少なくなったんです。」
そう言って、深呼吸してる。
「そっか。」
「だけど、今日不安感があったからつい住所気づいたら言ってました。」
「その不安感のお陰で、俺はあんたに会えたんだ。スゲー。嬉しいわ。それなかったら、会えなかったわけだし」
そう言うと驚いた顔してる。
「ごめん。酷い言い方だったよな。」
「ううん。そんな事言われた事なかったから…。」
そう言って、少し笑った。
「今もあるの不安感?」
そう言うとゆっくり頷いた。
「旦那さんは?」
「いない。」
「どこ行ったの?」
「出張。」
「いつまで?」
「日曜日には、帰ってくる。」
「一人でいれるの?」
「何とか頑張るから、大丈夫」
「どうやって?」
「朝まで起きてるだけ、ムギ姫いるし。」
「俺とちょっとでも会ったら安心したりしない?例えば、昼間でも。変な意味じゃなくて」
「わからないよ。」
「もし、あんたが安心するなら!俺、あんたの旦那さん帰ってくるまでこっちにいるから」
「意味わからないよ。」
そう言われて、腕掴んでた。
「あんたが、決めてくれよ。俺と居たくないなら、明日には帰るからさ。」
「決められないよ。」
「何で?」
「帰った方がいいよ。この関係、へんだよ。」
「へんじゃないよ。それが、理由?」
「男女に友情なんてないよ。」
「あるよ。あんたと俺だよ。」
「ないよ。好きになりかけてるって言ったよね。」
「それ、嘘だよ。会ってわかったけど、あんたあの日と何も気持ち変わってないよ。」
「何でわかるの?」
「わかるよ。あんた見たら」
「ごめん。帰る。」
「不安感あるんでしょ?俺が、いたら消えない?無理かな?」
「無理じゃないよ。だけど、迷惑かけるから」
「迷惑じゃないよ。これ、最後にするから…。もう、会いにこないから」
そう言ったら、やっと俺を見てくれた。
「朝になる前には、帰るから」
「カラオケでも行こう。探すから場所。」
そう言って、さっき来た道引き返してタクシーに乗った。
カラオケに連れてきてもらった。
二人ではいる。
何か、来てくれてよかった。
「二時間で」二時間だけにしてはいった。




