同じ気持ち?
ブーブー
スマホが鳴る。たつみ
いや、意味がわからないから
あんなに嫌な事言ってかけてくる
普通。
切れては、また鳴る。
無視、無視。
ブーブー。
無視したいのに。
「はい。」出てしまった。
「よかった。でないかと思った」
「しつこいので」
「出るまで、かけ続けようと思ってた。」
「だから、無理だっていいましたよね。私は、巽君を好きになってきてるって」
「その好きは、俺の好きと同じですよね?」
「違うと思います。」
「俺は、あんたの事一生見届けたい。」
「意味がわかりません。」
「あんたが、死ぬ時まで見届けたいんだよ。」
「意味がわかりません。」
「俺もわかんないよ。こんな気持ち初めてだから」
わかる。
言葉に出来ない気持ちなんだ。
「言ってる事が、本当にわかりません。」
「俺、今まで女の人に会ったら好きか嫌いか、やりたいかやりたくないか、そうやってわけてた。でも、あんたに会って、あんたと仲良くなって思った事は、男と女とかになりたくないって。一生電話だけの関係でもいいから、あんたとずっと繋がっていたい。それだけだった。」
私と、同じだ。
失いたくないんだ。
わかるけど、不倫報道されたら…
巽君の人生が、ダメになる。
「よくわからないです。私には…。」
「そんな。俺、あんたと出会ってから毎日本当に楽しいんだよ。今日なんか、一日静止画みたいだったんだよ。好きな歌、歌っても楽しくなくて。出会う前にもどれないんだよ。あんたもわかるだろ?」
「わからないです。」
「なんで、そんな嘘つくんだよ。」
ダメだ。苦しくなってきた。
「休みになったら、会いに行く。あんたどこに住んでるの?」
「巽君と私は、住む世界が違います。」
「何で、そんな事言うんだよ。あんたの世界に俺は入っただろ?」
痛いぐらい気持ちがわかる。
「一度もはいってません。巽君と私は、二度と関わることはありません。短い間でしたが、ありがとうございました。」
「何で、嘘つくの?まだ、まだ、これからも続いたでしょ?熱愛報道が出たから?誰かに何か言われたの?」
「ごめんなさい。」
「謝ってほしいわけじゃないよ。謝ってなんかほしくないよ。あんたの弟だったらよかった。あんたの家族だったらよかった。俺、あんたとこんな形で終わるの嫌だよ。」
「連絡先、消しておきますね。」
「俺、あんたに何かした。俺、あんたの事本当に大切なんだよ。信じてほしいよ。あんたにだけは、嫌われたくない。」
「そう言ってくれて嬉しかったです。さようなら」
そう言って、電話を切った。
ごめんなさい。
本当は、巽君の気持ちが痛い程わかってた。
わかってたのに嘘ついた。
認めたら、また電話したくなるから
不思議な感情。
多分、誰にもわかってもらえない感情。
私も生まれて初めてもった。
巽くんが言った、死ぬまで見届けたい。
意味がわかるよ。
何かわからないけど、私も一生見届けたいと思ったんだよ。
巽君に、彼女が居ても、結婚しても、ずっとずっと見守りたい。
一生、電話だけでもいい。
会わなくたっていい。
こんな、形で終わりたくなかった。
すごく、楽しかった。
巽君が、今日話した言葉、全部わかる。
全部わかるのに、何で傷つけるような事言ったんだろう。
私は、泣きながらベッドに寝転がった。
なにもしたくない。
なにもしたくない。
また、心が剥がれた気がした。