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メイド

 リリーに仕える事になって数日経った。当初は散々こき使われると思っていたが、それは間違いだった。何故ならリリーは基本的に屋敷を出ない、つまり護衛の必要も無く、俺は暇を持て余しているほどだ。


 仕事もせずに窓から外を眺めて紅茶を嗜むことは、この上ない背徳感を感じる。これが上流階級てやつか、人生わからないものだ。そんな優雅なひと時は1人のメイドに壊される。


 アカリだ。


 部屋の扉をノックもせずにズカズカと入って来た彼女は開口一番こう告げた。


「旦那様が明日の一時に面会を希望しております」


 その時の俺の表情は間抜けずらを晒していたらしい、すぐさまアカリに指摘される。


「阿保丸出しの顔してどうしたんですか?……あぁ元からでしたっけ?」

「お前は医者に行って目を見てもらえ」。

「貴方は医者に行って頭を見てもらった方がいわね」

「はいはい……それで?公爵閣下は何用なんだ?」

「ただのメイドが知る訳無いでしょ、足りない頭で考えなさい」


 このメイドは相変わらずだ。すでに俺もアカリの扱いは雑になっている。何故ならここに来てから毎日、押しかけてはトゲを刺して帰っていくからだ。


「わかった、戻っていいぞ」

「まぁそう言わないでよ!私達の仲じゃない!」


 急にコロッと態度を変え、媚を売ってくる。可愛らしいその表情が奇妙に感じるのは、彼女の行いの悪さだろう。


「なんなんだ?」

「紅茶の一杯ぐらい飲ませなさいよ!」

「自分で入れろよ、仮にもメイドだろ」

「仮にとは何よ、あんた以外には真面目にやってるわよ」


 平然とそう言いながら紅茶を入れ始め、対面に許可無く座る。サボるために利用されてるのは釈だが、この屋敷で一番話しやすい相手だからむげにも出来ない。


「俺にも真面目に接したらどうだ?」

「かしこまりましたアルス様、先ほどは大変失礼いたしました。つい本心が漏れ出てしまい貴方様を傷つけるお言葉を……」

「丁寧に話してるだけで本質はかわってないな」

「あんたに見繕っても意味ないでしょ、それよりあんた何したのよ、旦那様に呼ばれるなんて……もしかしてお嬢様に手を出した⁉︎」

「出すか! 公爵に殺される前にリリーに殺されるぞ」

「お嬢様の事をリリーだなんて……これは間違いないわね。もしよかったら紅茶を飲み合った好しみとして介錯ならしてあげるわよ。旦那様に殺されるより楽にやってあげるわ」


 アカリは決め台詞かの如く、ウインクをして可愛くきめる。見た目は可愛くてもセリフは物騒すぎて可愛く感じない。


「事実無根だ」

「ふーん、あながち間違いじゃないと思ったけど違うみたいね。なら例の事件の事かしらね?暗殺者……だっけ?」


 アカリの声のトーンが一段階さがる。


「それ以外思いつかないが、知っている事は全部話してあるしな、想像も出来ん」

「じゃあ案外別件かもね、無礼な事して斬られるんじゃないわよ」

「それは自信がないな」


 アカリは溜息を吐きながら提案してくる。


「しょうがないわね、最低限は教えてあげるわ、条件しだいで」

「金なら無いぞ」

「そんなもの要らないわよ、あんたより貰ってるし。サボる時にここで紅茶を飲ませてくれるだけでいいわ」

「いや待て! なんでお前みたいなふざけたメイドが俺よりもらってるんだ⁉︎」

「ふん、これが現実てやつよ!」


 納得できん!いや、これが身分の差てやつか……。


「お前良いとこのお嬢様なのか?」

「私は平民よ、残念だったわね!これで言い訳できないわよ!おーほほほほほ!」


 ぐぬぬぅ。無性に負けた気がする。ここは撤退するしかない、いや、最後に勝利出来れば問題ない。


 そう惨めに言い訳しながら紅茶を飲み干し、彼女に最低限の礼儀を教えてもらう事にする。


「そうね!まずはアカリ先生と呼びなさい!」

「それで先生何すればいいんだ?」

「ア・カ・リ・セ・ン・セ・イ」

「アカリ先生、これでいいか?」


 アカリは満足そうにうなずくと、俺に礼儀を教え始める。なんでも礼儀とは一長一短で身につくものでは無いらしく今の俺ではマスターは無理らしい。


 そこで礼儀を身に付けた様に、見せかける「アカリ直伝作法三式」とやらを叩き込まれた。アカリを公爵閣下に見立てて、アカリの発した言葉に即座にアカリ直伝作法をぶつける謎の特訓を繰り返す。


 気づけば辺りは暗くなってきたが、それでも自称アカリ先生はまだ足りないと言い張り特訓を続けた。本当に効果があるのかはわからないが、アカリがこんな遅くまで教えてくれると言う事は彼女なりの気遣いなのだろう、文句を言わずに従う事にした。


 結局解放されたのは皆が寝静まる頃だった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 目の前に整った髭を生やした、目つきの鋭い男が座っている、ヴェルクス家当主だ。


「貴様がアルスか、話しの通り若いな」

「はっ! お会いできて光栄であります!公爵閣下!」


アカリ直伝作法1、元気いっぱいエセ軍隊!。


 これを忘れなければ細かいミスは目を詰むてくれる事が多いらしい。


 よし!順調な出だしだ。


「娘から話しは聞いている、世話になったみたいだな。私からも礼を言う、ありがとう」

「いえ! 当然の事であります!」


 アカリ直伝作法2、公爵家の為ならば命すら投げ出せると思い込み会話せよ!。


 ここまでは、悪い印象は与えてないように感じる。アカリとの特訓が役に立ってるぞ!。


「そうか、それでどうだね屋敷は慣れたか?」

「はっ! 皆良くしてくれます! これも公爵閣下の御意向あってのこと!」


 アカリ直伝作法3、返答に困る事が有れば兎に角、相手を褒めておけ!。


「それはよかった、それでは本題に移ろう。娘の事だ……あれの気性は君みも良く知っているだろ?」

「公爵閣下の教育の賜物でありましょう!」


 俺は昨日の長きに渡る特訓の成果として、アカリ直伝作法3を即座に使用する。兎に角、相手を褒める!。


 ん?何か違和感が。


「……それで学園についてだ、このままでは卒業できるか不安で仕方がない。君には娘が卒業できるよう手伝って貰いたい」


 ここはアカリ直伝作法2だ!


「はっ! 命にかけましても果たして見せます!」


 あれ?俺は今恐ろしい事を言っている気がする。


「そうか! それはよかった! どこの馬の骨ともしれない輩と思っていたが見所があるようだ、男に二言はないぞ。もし失敗したらその首繋がってると思うなよ」

「はっ! この命は公爵家のために!」


 アカリ先生、何か違います……。

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