まったり異世界旅行
なんでこんなもの書いたのでしょう。消したいですがもう遅い。私の指は止まらない。
青年はいつものように、ベッドで横になりながらスマホをいじっていた…はずだった。
事件は夜中、スマホで動画を漁っている最中に起こった。「とじろ」とだけ書かれた黒いサムネの動画を見つけた青年は、その不思議なタイトルに誘われて動画を開いた。瞬間、部屋の電灯が太陽の光に変わり熱を持ち始め扇風機によって青年に当たっていた風が全体から頭の上に風量を増して送られていった。青年はベッドの柵に頭を乗せた状態でスマホを操作していたので、頭を支えるものがなくなり地面に軽く頭を打ち付けてしまった。ゴンッという鈍いが響かない音が頭の中でだけで痛みの形で響まくるので、不快感と頭の表面の痛みとで頭を抱えて横たわりながらうずくまった。
青年は頭の痛みが引くと、周りを見渡すために肘を地面につきながら軽く上体を起こした。
周りは草だらけ。草原の真ん中に一人で寝かされた。青年は状況からスマホをいじって寝落ちしたため、起きたらベッドの柵から頭を落としてしまったのだと見当違いな予想を現実から目を背けるために考えたが、足に当たる草と土の肌触りから、全く別の場所だということは容易に想像がついた。頭が落ちた時に石の上に落ちたんじゃないかと後頭部をさするが、その間に目の前に人の足が立っていた。
緩やかな速度で上から降ってきた足が目の前で直立していた。頭痛と頭を打った時の耳鳴りが収まり冷静に考える余裕が出てきた頃、すでにベッドから草原に瞬間移動をさせられ現状の理解しようにもできない現実を無理やり理解しようと努力している(理解をあきらめようともしている)青年の頭に、さらなる難題を落としてきた。ヘリコプターやジェット機のような音もせず、ただひたすら無音のまま3Dキャラクターが落ちてくるみたいにして、目の前に登場した。
青年は直線的な動きで降りてきたこの人(?)を見た瞬間が、青年の人生で一番驚いた瞬間だった。
青年は横たわっていた状況で驚愕から動けなかった。会話は降りてきた少女から始まった。
「あー、阿部さんですね?阿部太一さんですね?こんにちは。私、今回あなたの担当をさせていただくヴィオです。といっても世話するのは今だけですが。」
阿部は目の前のヴィオと名乗る少女が足だけでなく上半身もおそらく人間だろうと考え心の中で少し安堵した。これで目と鼻と口(特に口)がないと言ったら…阿部は少しの恐怖を胸に恐る恐るヴィオの顔を見た。よかった…顔だった…。そんな事を気にしながら、そうとわかると阿部は余裕が少し出てきていた。よくよく見るとヴィオはとても阿部の好きなタイプの清楚な少女であった。
「あ、どうも、阿部です。」
「どうぞよろしくお願いします。私は阿部さんが前いた世界から別の世界へ行くための準備のお手伝いをさせていただきます。」
「異世界転生ですか!」
「異世界転移です!では、早速準備していきましょう!」
阿部は自分の間違いに耳を赤くしながら、ヴィオの言葉を少し疑っていたが、好奇心と自分が夢見たファンタジーの世界へ足を踏み入れられることとで興奮してしまい、簡単にヴィオの言葉を鵜呑みにした。
異世界に転生するには手続きが必要だった。しかし、そこまで難しいものもない。そればかりか、阿部が今まで夢見ていた異世界転生後の能力をこの手続きで選べる事など、今後の異世界での生活にさらに期待を寄せられるような内容が多かった。
「注意とかありますか?」と阿部が聞くと、「いいえ、でも、私はどんな事になっても知りませんよ?」と、返された。