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魔物の日常  作者: ちょんまげプリン
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おかえり、ヒュー・シー

その場にいた誰もがそれをみていた。魔城の前に、地上に黒い竜巻が移動せずに舞い上がる。その竜巻は徐々に小さくなっていく。

「? なんだあれは?」

「全員、備えろ!」

ヴィアが指示すると、その場にいた四天王はその竜巻を即座に囲み、ヴィアも臨戦態勢にはいった。周りの眷属たちもそれを見て次々と臨戦態勢に入る。通常シークレアに侵入者が入るとヴィア及び四天王達がすぐに気づく。ちなみにこのシークレアは剣山のような山に周囲が囲まれており、その山の周りには草原が広がりそれらを囲むように大河が流れている。草原には見張りの魔物がおり、大河の中にもリヴァイアサンが主として待機し、空には竜達が旋回している。つまりこれらをかいくぐり魔城の前にいきなり侵入されることは異常事態であり、それ相応の強敵であることはこの場の誰もが理解できた。

その黒い竜巻は少しずつ小さくなって行き、中にいる者の姿が見えてくる。初めに見えたのは大きな黒い翼。その翼の先の方が何か所か折れており、垂れ下がっていた。羽根が汚く散乱し、もはや飛べそうにない。そして次に見えるのは足。その足には無数の傷と打撲があり、足指の爪はすべて剥がれていた。次々と体が見えてくるが痛々しい傷や出血が見られ、壮絶な戦いの後がよくわかる。最後見えた顔は、凛としていて体の負傷をも気にしていないようであったが、片目は完全に潰され、口からは血が垂れ流れている。

「、、、ヒュー、、、シー、、、ただ、、、いま、、、帰還しまし、、、た、、、」

今にも倒れそうなその体を起こし、途切れ途切れそう言った。

この瞬間ヴィアはこの国を統括するほどの頭脳をフル回転させ、ヒュー・シーと名乗る者を見た。その姿は傷だらけで、もはや前に見たヒュー・シーとは別人であったがたった一つの、ヒュー・シーと見分けるられるもの。それは首に掛けられたアクセサリー。見た目はただの金属の輪でそれに紐を通らせて首に掛けれるようにした、とても素朴なアクセサリー。そのアクセサリーはヴィアが一番最初にヒュー・シーと出会った頃、まだお金も力もなかったとき、ヒュー・シーを自分の配下にして欲しいと願い、その証としてヴィアが簡単に作ったものだった。魔物の国シークレアをつくり財力も力も増え、魔物が数もかなり多くなってい来た頃、新しく、より一層高価なもので作ったものをあげようとしたがヒュー・シーは頑なに断りその質素なアクセサリーを付け続けた。そんな簡素なものが自分が作ったことが知られるのが恥ずかしく、ヒュー・シーがはずそうとしないので何回か盗んで無理やり取り換えようとしたが毎回失敗し、その度に叱られた。その様子を見ればどっちが主かわからないものであった。ただなぜかそれが楽しく毎回それなりに凝った作戦をヴィアが立てていたことは秘密である。


ヴィアはその首にかけてあるアクセサリーを見るや否やヒュー・シーに抱き着き、

「よく帰ってきた、、、ずっとそれを持っていたんだな、、、」

そう涙を流しながら言った。

「、、、ヴィア様の最初の贈り物ですからね、、、ずっと持っていますよ、、、」

そしてその場にいた四天王達もヒュー・シーに抱き着き、喜び合った。周りいた眷属たちは滝のような涙を流す者、失神する者など様々であった。そんな中ヒュー・シーが口を開いた。

「皆さん感動しているところ申し訳ありませんが、俺、もうげんかぃ、、、」

そういうとヒュー・シーは意識を失った。そこからはもう大騒ぎであった。ヴィアがその権限で医療魔法特化型の天使達をすべて集め集中治療をし、四天王たちはヒュー・シーの治療中に敵が来てもいつでも殺せるように常時臨戦態勢であった。そして眷属たちも防衛やヒュー・シーに関わる人たちの食料の供給に大忙しだった。魔力の回復方法は時間経過、食事、睡眠などがある。時間経過より食事で魔法を回復した方が早かった。そのため魔力の消費分、食料が必要であり、常時臨戦態勢の四天王に加え、治療している天使達の食料の消費はえげつなかった。そうしてこの一か月で治療が完了したが、この一か月で一年分の食料が消費されたのであった。


因みに、この一か月間、人が異常に多く攫われる事件が発生していたという。

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