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魔物の日常  作者: ちょんまげプリン
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追悼式(?)

―――100年後――――


「ヴィア様、今日はあの日から100年が経ちました。ヒュー・シーの勇士を称え、全眷属たちで追悼式を行ってはいかがでしょうか?」

そう言うのはエルフのシデン・ノア。彼女は四天王の1人である。四天王とはヒュー・シー消滅後、主であるヴィアが士気を高くもって欲しいと思い、位置付けたものだ。ノアは魔法と弓を巧みに使い、それらを組み合わせて繰り出す技はエルフの中の最強といえる。ノアはエルフであるため容姿には非の打ち所がない。

「・・・そうだな。私はいいと思う。お前らはどうだ?」

そう答えるのはこの魔物の国の主であり、竜王であるジーク・ヴィアである。魔物界の中でも圧倒的な力を持ち、いつどんな時でも適格な判断を下せるその統括力はこの国の支配者として相応しかった。ヴィアは支配者としては少し小さいくらい身長であり、直属配下の女性陣と外に歩くと、姉達に引き連られた妹に見えてしまう。そんな彼女は普段は人化して過ごしている。竜になるのは戦うときのみだ。

「割り切れないところはまだあるけど、、、そうね、いいと思うわ。」

そう答えるのは四天王の1人ヴァンパイアのジ・マゼンタ。真祖のヴァンパイアであり、太陽を克服するために新しい魔法を生み出すほどの技量から、四天王に選ばれた。彼女は常日頃オペラの仮面のような奇妙なお面をつけているが、その内側にはノアにも引けをとらないほどの美しい顔が隠されている。今までそれを外したことはなかったが、100年前のあの戦いの中で砕け散り、初めてその時マゼンタの素顔が明かされたのだった。

「俺は反対だ!、、、と言いたいが、いつまでも未練たらしくいるのは鬼神として恥じだからな。

 まあ、その案はいいと思うぜ」

そう答えるのは四天王の1人の鬼神のデスト。鬼はその圧倒的な腕力で敵をなぎ倒す、物理特化型であるため遠距離から魔法を使う相手には少々手こずることが多かった。そこで自分の弱点を潰すために魔法を猛特訓し、魔法を使えるようにした。その魔法の力は魔法特化型のマゼンタには劣るが、気を抜くとマゼンタも危ないくらいのレベルである。鬼の最大の弱点を克服した彼の努力が認められ四天王に選ばれた。因みにこの魔法はデストが毎日しつこくマゼンタにまとわりつき、渋々マゼンタが教えていたことは2人だけの秘密である。

「・・・いいとおもう。」

そう静かに言うのはオートマタのメス・ティア。圧倒的な機械の力を持ちながら、感情、自分で物事を考える力がある彼女はもはや人間であり、暴走も起こさず、人間の街で潜入できて、有能すぎることから四天王

に選ばれた。

「では、今日の夜に決行できますよう、準備いたしますので、ティア、手伝っていただけますでしょうか。」

「・・・わかった。」

そうして2人が退席したあと、しばらく沈黙が続いた。そしてヴィアが静かにつぶやいた。

「あの時私が敗北を認めて、全軍撤退すれば変わっていたのかな、、、」

ヴィアはあの日以来自分の犯した失態を悔やんでいた。魔物の国を統括する身であるヴィアは指揮官でもあり、ヴィアの命令1つで眷属、直属配下は動く。ゆえにあの時戦いでもヴィアの指揮がまずかったのではないかと思っていた。

「何をおっしゃるのですかヴィア様。撤退したとしてもあの状態ではすぐに追いつかれて全滅していました

よ。」

「それもあるかもしれねぇが、実はあの時俺らの後ろから別の敵が来てたぞ。途中からやけにヒュー・シーが後方を気にしているから、あいつが最終魔法を放った時後方を見たらすぐそこまで来ていたぜ。マゼンタが言ったこともあっただろうが、逃げても後ろから来た敵とで袋叩きだったぜ、、、」

「ヒュー・シーは敵感知能力がずば抜けていたからな、全て分かっていたのか、、、」

「そう、かもしれませんね、、、」

「ところでヒュー・シーの使いのミカファールはどうしているんだ?俺はあまり魔城にはいないからよくわかってないんだが」

魔城とはヴィアと直属配下及び彼らの使いが普段住んでいるところであり、魔物の国の中心地だ。

デストがそう言うと少しの沈黙が訪れた。デストが不思議そうにいると、

「ミカファールはあの日からずっとヒュー・シーの帰りを待っていた。私たちもなるべく真実は告げまいと、どうにかこうにか嘘をついていたが、10年たったある日、さすがのミカファールも感ずいたらしく、そのことを話したんだ。」

暗い顔でヴィアは続けて話した。

「真実を告げた後、ミカファールは何かにとりつかれたようにヒュー・シーを探し、魔城から抜け出し、魔物の国から遠いところに行ってしまうことがあった。私たちも仕方がなくミカファールを軟禁状態にしたが、しばらくすると自傷行為に走り出してしまう始末であり、現在は医療特化の魔法を使うリバのところにおいている。だけども、ミカファールは食事もあまりとらず、大きな鬱から命の危機もあり、もはや大天使の面影すらない。故に彼女の寿命はもう長くない、、、」

「・・・そうだったのか、、、すまない、空気の読めない発言をしたことを許してほしい。」

「気にすることはない、デストは眷属の訓練で忙しいし、あまり魔城にはいない。こちらのことまで知るのは難しいだろう」

その後特に何も話すことなく各々退席していった。昔、ヒュー・シーがいた時にはこんな静かな話し合い

はなかった。いつもマゼンタとデストが喧嘩をしておりそれを止めようとするノア。それになぜか割り込みさらにことを悪化させる子供のようなヴィア。そしてそれを静かにほほえみながら見守る母のようなティアと楽しんでいるヒュー・シー。今では2人は喧嘩もしなくなり、子供のような元気があったヴィアはおとなしくなってしまった。喧嘩が起きなければノアは何もせず、ティアは微笑まずただ座っている。機械的な

会議がずっと続いていた。魔物の国の活気は別段変わっていないが、皆がどこか物寂しく感じていた。




「これより、ヒュー・シーの追悼式を始める。」

ヴィアがそういうと眷属たちは皆静まりかえった。ここにいるのはエルフ、ハーピー、亜人、オーガ、メデューサ、ヴァンパイア、天使、竜など、他にも多くの種の魔物や人外種がそろっていた。ここはヴィアが統括する魔物の国「シークレア」。「魔物の国」言われているがそれは人間達がそう呼んでいるためであり、その由来も人間に実際に影響を及ぼしているのが大半が魔物であったからだ。シークレアは人間に対する憎悪から皆が一致団結し、こうして国となった。シークレアに攻め込んできた人間は未だにいないが、100年前のあの戦いでヒュー・シーの最終魔法がなければヴィア達がやられ人間達が前勢力でそのまま国に攻め込んできただろう。戦いの場はシークレアからやや離れたところであり、体力、魔力が全回復し、シークレアに強制転移されたヴィア達は仮にそのまま人間達が進行してきても返り討ちできただろう。だが人間達は攻め込まず撤退したため無事にその戦いは終了した。

「一同、ヒュー・シーの栄誉を称え、追悼」

そのとき誰もがヒュー・シーの姿を思い出し、あの勇士を思い返しているだろう。そして、このとき誰も想像しなかっただろう、ヒュー・シーが亜空間で無限に沸くと言われた敵を薙ぎ払い、100年経った時その亜空間が崩れ始めたことを。ヒュー・シーの周囲を取り囲む黒い空間にヒビがはいり、白い光が入り込む。

100年越しに堕天使ヒュー・シーが再び地上へ帰還する。

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