第9話 街中のバトル(2)
「言っとくけど、私、強いよ?」
「ならば、その実力、見せていただきましょう!」
その言葉で私と店員さんのバトルが始まった。私の武器は短剣、店員さんは双剣だ。
「そうだ!白ウサギさんはチャグ猫の方をお願い!」
「既に対応済みです!」
見ると、チャグ猫にロープがグルグル巻きになっていた。チャグ猫の方は「離せ!離しやがれ!」って叫んでた。
「ありがと!」
「おやおや、勝負の最中に余所見とは、いい度胸です!」
店員さんの双剣が迫って来る。
「うわ!?…なんて、言うと思った?そんな単調な攻撃、お見通しだってのッ!」
間一髪で避けた私の頭上で双剣が交差する。
「ッーーなかなか、やりますね…ですが、これは、どうかなッ?」
今度は双剣を1本のみ使った突きが来る。私は短剣で威力を緩和して避ける。
「弱い。言っとくと、私剣術に強化ついてるから、同じ剣術なら私の方が強い。今消えるなら見逃してあげるけど、それを拒否するのなら私は容赦しない。どうする?」
「消える……?私が……?ハハッ、何を言っているのですか?消えるのは、貴女の方ですよ?“この世から”消えるのは。貴女です!」
そう言いながら不意打ちの一撃を私に当てようとしてくる。当然ながら、避ける。
「不意打ちなんて卑怯な真似してまで勝ちたい?なら、私も反則技、使わせてもらうけど。『炎よ、集え。炎球!』フフ、避けられる?」
「なッ!?魔法…だと……!?ですが、所詮は低級魔法。貴女が有利になるとは考えがたい!」
そう言って店員さんは双剣を交差させてファイアボールの勢いを打ち消した。
「なるほどね?ならこっちは?」
私は無詠唱で上級魔法の『強光』を発動する。
ちなみにこれらの魔法を私がいつ覚えたのかと言うと…
ーーー
昨日の夜の事
「アリス様、魔法の練習を致しませんか?」
「え?また急だね」
「使うことができれば便利なので。適正魔法であれば、呪文を覚える事ができれば無詠唱でも発動することができます。アリス様には適正魔法が多いので呪文はこの本で」
そう言って白ウサギさんが机の上に置いたのはかなり分厚い4冊の本だった。
「アリス様は記憶力は良うございますか?」
「え?うん、まあまあかな?」
「でしたら簡単でしょう。この本に載っている呪文はさして長くないので。上級魔法でも十文字前後です」
「じゃあ覚えとくね」
ーー数分後ーー
「見て、白ウサギさん!いくつか同時に魔法展開できた!」
「す、数分で…やはり素質があります!」
「ありがと」
そこで魔法の展開をストップする。ちなみにそんなに威力の高くない低級魔法を展開して5個だったから上級魔法は2個ぐらいかな?
「ふう、疲れた…白ウサギさん、おやすみね〜」
「はい。おやすみなさいませ」
ーーーー
まあ、もともと記憶力には割と自信があるし、適正魔法ってこともあってかなり簡単だったよ。ってことで、バトルの方に意識を戻させていただきましょう。
「どう?目、見えないでしょ」
「見えなくとも気配は感じられますから。それにしても、卑怯な手を使う」
「ま、それはお互い様ってことで」
その言葉と同時に今度は水属性の魔法『水刃』を発動する。店員さんの首目掛けて。
「留めだよ。私に勝負を仕掛けたこと、あの世で後悔しなよ」
「ッーー」
店員さんは倒れ、ピクピクと体を痙攣させた後動かなくなった。店員さんの首は数メートル先に転がっていた。
「ふぅ、終わった。白ウサギさん、そっちも仕留めちゃう?」
「いえ。後で衛兵隊の詰め所に突き出しておきます」
「そっか。…怖かった、な。まあ、フォレストボアに出会った時よりは慣れたけど。ねぇ、帰ろう?」
「ええ。返り血も洗いたいものですし。それにアリス様のステータスも確認しておきたい」
かくして、突然現れた不審な奴らとのバトルは幕を閉じた。