【追放】家を追い出されたどうしよう【魔王】
ある日、魔王は魔王に負けた。そう、異世界の魔王が魔王の座を奪い。魔王の地位を奪ったのだ。
魔王ちゃんは懸命に戦ったしかし。勝とうと戦っても相手は勇者を倒した実力は本物であり。側近や四天王さえも異世界から来た魔王に従った。
「くっ……最初から奪うことが目的だったか!!」
「ええそうよ」(違うわよ)
同じ赤い紙を持つ魔王が笑みを浮かべて指を指すと魔王ちゃんの底に穴が開き沼に落ちるように手が伸び沈められる。
「な!? なにいい!!」
「フフフ。動けまい……今からお前に情けをかけよう。我々に異世界の知識をもたらしてくれた恩のため命は奪わぬ。だが……追放だ」
「くゅ!? 離して!!」
「命は奪わぬが。刃向かった報いとし人間に陵辱され奴隷に落ちよ」(沼の手ざわりで結構大きいし中々良いからだ。小さい体だがいいかも)
ガチン!!
魔王ちゃんの首に聖なる神の紋章が首輪のように巻き付く。それは強い呪縛によって魔王ちゃんに結びついた。
「くくく……それは聖なる紋章。魔であるお前には非常に強い呪縛となるだろう」(さぁ~この紋章を割ることが出きるかな)
「くぅ……その顔にいつか噛みついてやる!!」
「フフフ……ああ。噛みついてこい。お前が果たして本物の魔王ならな!! はははははははは!!」
魔王ちゃんは沼に落ち。人間の都市へと落とされたのだった。
*
「家無しになってしまった……無一文……くぅ……昔に逆戻りか。いや……バッグがある。なになに?」
「魔王ちゃんへ……大変ね。旅にいるかなって贈らせてもらった。忍者食もあるから何とか味方を集めて逆襲するべきby魔王」
魔王ちゃんはそれを担ぐ。そこそこの重さがあるが丁度いい量に調整されており流石と思う。そして、全員が全員敵となった訳ではないことを知った。
「うぐ……」
しかし、魔王ちゃんは唇を噛んだ。魔王でありながら負け、お情けの生存に。そして、また違う魔王に助けられたのだ。これほどの屈辱は懐かしさを覚える。
「いいさ、ぐすん。ここからだったんだ余は」
魔王ちゃんは溢れる悔しさを拭う。しかし、止まるどころか溢れんばかりで止まる気配はない。理由はもちろん夢の挫折がひっそりと肩を叩いているようだったのだ。諦めろと弱い部分がささやく。
「ちくしょう……ちくしょう……」
そうこうしているうちに周りに視線を感じ、魔王ちゃんはとにかく移動を始める。そのとき、声をかけられた。
「あの……君は?」
その声の主は驚いた表情で魔王ちゃんを見る。そう、勇者が魔王ちゃんの近くを”たまたま”通ったのだ。
「おまえは?」
「ここではなんだ。ちょっと一緒に来て欲しい」
「余計なお世話だ。余は忙しい」
勇者が耳元でささやく。
「魔王……ここではなんだ。目線が多い……なにかあったか聞かせてほしい」
「おまえ!? どういった吹き回しだ!!」
「静かに……ああもう。衛兵が近づいてくる!!」
ヒョイ!!
勇者が魔王を姫様抱っこし大声で謝りながら走り出す。
「うちの冒険仲間がすいませんでした!!」
そう言いながら走るとなんだ冒険者かと侮蔑の目線へと変わり関わらないでおこうと皆が離れていく。場所を離れ路地裏の荷物置きに身を隠し、勇者が魔王ちゃんを解放する。荒い息を整えて汗をぬぐい勇者は優しい笑みを向ける。
「大丈夫でしたか? 重たいですね……」
「なんで助けた?」
「その……泣いている姿につい。知らない人でもないので……一瞬でしたが」
「赤の他人だろう」
「それでも。何かあったと考えるじゃないですか?」
「ふん。おまぬけな勇者だな。余は元魔王ぞ」
「元?」
「口が滑ったな……」
魔王ちゃんは逡巡し、そして諦めたように言葉をこぼした。もう、いまさら全てを失なったのにこれ以上残っている物はないと気づいたのだ。
「そうだな。私は新たな魔王に負けた」
「新たな魔王!?」
勇者が驚いた表情をする。
「そうだ。弱肉強食の世界であり下剋上も当たり前の世界。ゆえに負けた私は座を奪われ今こうして弱体化の呪いと共に捨てられた。みじめに生きて恥を晒せとな……本当に魔王らしい魔王が現れたよ」
「……えっと」
「すまんかった。いや……」
魔王が立ち上がる。決意を持った表情で落ち着きを取り戻した魔王は勇者に向き直った。そして胸の内をさらけ出す。失う物なぞないのだから。
「あのまま泣いてばかりでは何も進めなかっただろう。余はこれから座を奪還する。夢のために敵であるから恩を返せないのが心苦しい。だが、それでも素直にうれしい。助けてくださって本当にありがとうございました」
魔王ちゃんは笑みを浮かべて真っ直ぐ堂々と言い放つ。
「こんど会ったときは敵同士。とくとく首を取れ。価値があるかわからんが価値ある首に戻ってみせるよ」
そして振り向き離れようと歩を進めたとき。ギュッと腕をつかまれた。魔王ちゃんが振り向くと少し耳が赤い勇者が驚いた表情をしている。
「なんだ?」
「あっ……いや……」
「我には時間がない。あの魔王が行う政治はきっと多くの血を流すだろう。民が危ない」
「そ、それなら!! 俺のパーティーに入りませんか!!」
「は?」
「行き先は一緒だ。それに弱体化の呪い受けている中で単独では大変です。俺だってまだ旅立つには早いと感じています。もう少しゆっくりと作戦も呪いも外せるかも……」
「支離滅裂」
「とにかく!! 一人では無理なんです。元魔王なら弱体化でも戦力です。一緒に冒険者になりませんか!!」
「余に仲間になれというのか?」
「一時休戦です。この手は離しませんよ」
「……」
魔王ちゃんはその手と真剣な表情をする勇者を見てため息を吐き。根負けする。その表情は本当に離さない意思を強く示していた。そう、何度も戦いの中で見てきたものであるからこそ諦めたのだ。
「ふん、私の根負けだな。ただし……座を戻ったら覚悟しろ」
「ああ……覚悟した。仲間を紹介するよ。俺の名前はソル。君は?」
「余は自分でつけた名前はフラムだ」
自己紹介をしやっと手を離してもらえるのだった。
*
「っと言うことで今日からフラムちゃんが仲間になります」
「ちゅんをつけるなソル……それに気安く肩を掴むな」
「逃げないように」
「逃げない!!」
冒険者の集まる。荒くれの糞やろうの巣窟に勇者と共に顔を出した魔王ちゃんは3人の仲間に値踏みされた。
「お、おう……よろしくな。女だが剣士をやっている。フレイムだ」
「よろしくお願いします。宣教師をしておりますアクアです」
「えっと。魔法使いをしています。ウィンドです。始めまして……」
「すごいな。名前に四属性の名を持っているのが揃っている」
「それはもちろん。そういう運命。神様のお導きですよ」
「ふーん。神も名前で勇者を決めるか……」
「こ、こいつ!! なんだこの偉そうな姫さんは!! ソル!!」(やっべ!! 可愛いぞこいつ!! これ以上ライバルは!!)
「そうです。ソルさん……4人で丁度言ってましたよね?」(可愛い……胸もある……私より大きい)
「ソル……魔法使い系は私一人で十分でしょ? 何ができるの?」(なんで女性ばかりが仲間になるのよ!!)
「いや。それは……ええっと」
「荷物持ち程度と思ってくれ。なに、いつか居なくなる」
「そうそう!! 傭兵なんだ。俺が誘った」
「「「ふーん」」」
「……ソル。お前にらまれてるな。ふふ」
「まぁなんか。いつもこんな感じだよ」
「そうか……わかった」
魔王ちゃんは静かに席に座った。そして……勇者が旅の出発を告げた。最後の勇者パーティの出発となる。
*
「上手く行った? by魔王」
「行った行ったby魔王」
「留守の間どうする? by魔王」
「責任持って皆で国を回そう。暇でしょby魔王」
「ワシは富国強兵を唱えるぞby魔王」
「先ずは錬金術を広めるべきby魔王」
「忍者を作り裏から世界を暗躍by魔王」
「……やりたくない? ねたい……ああ。あなた……布団はがないで……by魔王」
「全部やる? by魔王」
「無理だろう。すべてはby魔王」
「中途半端が一番いけないby魔王」
「しかし、なぁby魔王」
「私は……何もしない方がいいと思います。側近と四天王で回せるでしょうby魔王」
「しかしなぁ……by魔王」
意見がまとまらず現状維持となる魔王ちゃんの国は明日はどっちだ!!