【勇者】勇者のいる場所に潜入。実況するぞ【潜入】
「うむ。一瞬で移動できるこの魔法。便利だな……」
魔王様は勇者のいる人間の首都に顔を出した。最近、側近に対して不満があったらしい魔王が錬金術で遠隔媒体を作ってくれたそれをポチポチ操作する。勇者が生まれる土地に顔を出した理由はもちろん魔王の外野が会え会えと五月蝿いからだった。
「Q、勇者の探し方は?」
「勇者のいる位置を示した地図を送るからそれを頼りにby魔王」
「身だしなみは大丈夫か? by魔王」
「第一印象が一番大事by魔王」
「仲間にするのが目的でいい? by魔王」
「折角なら……恋仲? きゃあああ!! by魔王」
「先ずは王子を見て判断しよう。卓袱台は用意したby魔王」
「まて、魔王。お前ら全員メスだろ。卓袱台は雄の仕事。雄は挙手by魔王」
「「「「ノby魔王」」」」
「本当にお前ら仲いいな……」
魔王様はそのまま地図と異世界の魔王頼りに行動する。
*
勇者はまだ若い。魔王と同じ年であり金髪が目立つためすぐに魔王様にはわかる。本では金髪だけの情報だったが地図にはそう表示されていた。
一人冒険者募集の掲示板を見ていた。
「懐かしい……彼もこんな感じで掲示板を見てたんですよ。それが今では駆け落ち魔王ですby魔王」
「おっ結ばれたの?」
「はい、お陰さまで駆け落ち成功しました。V。by魔王」
「おめでとう、籍はいつby魔王」
「お祝いしなくちゃby魔王」
「幸せになってねby魔王」
「……魔の王の癖にえらく優しいなお前ら。おめでとう」
魔王様が媒体をポッケにおさめる。ここからは現地に潜入した隠蔽率が異常に高い魔王が受け継ぐ。
「魔王ちゃん……接触開始」
「オーバー了解by魔王」
「……あ、あの!!」
「声上擦ってるwwwby魔王」
「かわいい……昔も勇者にあんなんだったby魔王」
「勇者と結婚させようby魔王」
「賛成多数」
「なんでしょうか?」
「えっと………ぴ」
「勇者と会ったがどうしたらいい? by魔王様」
「本人wwwby魔王」
「現状、撤退を進言しましょうby魔王」
「まず、あがり症を治すべきだがこれでフラグは立った。あとは何回か会うのだby魔王」
「撤退するby魔王様」
「ゆ、ゆうしゃ……また来るぞ」
「!?」
「「「おい!! by魔王」」」
*
「な、なぜ非難轟々なのだ?」
媒体から贈られてくる言葉は誹謗中傷も含んだ物に魔王様はしょげてしまう。公園のベンチで座りながら溜め息を吐く。
「魔王ちゃん。こんにちは……」
ベンチの後ろからヌッと現れた黒服の女性が影から現れる。
「お、お前は!? 何者!?」
「魔王です。まぁ……異世界の」
「ふむ。異世界の魔王とな!?」
「次元渡りの魔法が発見され、暇な魔王として抽選大会の結果。会いに来てみました」
「まじで……暇なんだなお前らは」
「暇です。世界を征服し。平和を楽しんでいるのです。退屈と感じる平和は愛しております」
「ほう……」
「でっ何で非難が多いかと言いますと。ヘタレた事で内弁慶だったこと。去り際に勇者と言ってしまった事があげられます。大人な魔王も多いのでね……まぁ非難するのは子供ぽいですが。期待の裏返しですね」
「うぐぅ……何故ワシにそこまで熱くなれるのだ?」
「まぁ初めての試みと言うのは面白いです。とにかく頑張って世界を治めて私達に会いに来てください」
「わ、わかった」
「では、私は帰ります。お達者で」
ブォン
黒い女は影に飛び込み消えてしまう。格好いい消え方に魔王様は同じ方法を思い付く。
「こういう去り方もいいな」
魔王様はそのまま真似て帰宅をするのだった。
*
「どうされましたか?」
「それが……いえ」
勇者の仲間に問われ勇者は悩んだ。どう見てみ魔王らしき人物が挨拶に来たことを直感で感じたのだ。決めつけは勇者であることを知っていたのである。
イメージの魔王を想像したが遥かに違っていた。まず女性であることに驚く。
「魔王は男性と聞いていましたが……女性なのでしょうか?」
勇者は仲間であり、使命を帯びた勇者でもある3人の女性に聞いた。
「私が神に聞くと男性であり16才と聞いてます」
「最近、神の声が聞こえませんから……質問できませんね」
「それよりも仲間の募集はどうでしたか?」
「あまり、よろしくはないね。君達と僕だけで向かうようになるだろ」
「長い旅になりそうです」
なお、この世界の神は既に魔王と開戦しそれどころではなかったのだった。
*
「勝手に神をシメるのNGなby魔王」
「何故だ敵であろう? by魔王」
「……可哀想だったby魔王」
「誰か、暴れない抑止力になってby魔王」
「不干渉は既に無理であろう。なら……もう行けるとこまで行こうby魔王」
「それアカン奴wwwby魔王」
「他の世界に干渉するのを禁じるとしようby魔王」
「「「おk」」」
「魔王……お願いが。今日の献立が決まっていない。今日の夕飯を言えby魔王」
「肉じゃがby魔王」
「カレーby魔王」
「今、こっちの旬は鰻ですね。なので鰻の蒲焼きです。炭火で焼いて秘伝のタレをいただいたので頑張って料理中。白米は既に炊き込めております。白米の上に乗る。油が乗った鰻のいい匂いと炭火で炙ったタレの極上の甘さが口一杯に広がる。たまらない逸品となっておりますby魔王」
「よし、お前の家に奪いに行く。覚悟しとけよ。魔王らしく表からだなby魔王」
「送るから来るな。迷惑by魔王」
「ありがとう。やっべ、晩飯の用意せんでよくなったわby魔王」
「もしかして魔王って自炊しないといけない? by魔王」
「旦那が愛しいなら、最初だけだけどby魔王」
「わかるby魔王」
「お前ら……本当に暇だなby魔王」
「つ【鏡】by魔王」
「「「wwwby魔王」」」