【練習】女になったはいいが……意味があるのか?【勇者】
「なぁ……側近」
「はい。可愛い可愛い魔王様」
「……おう。煽ってくるのやめないか?」
「キラッ!! 絶対美少女魔王様!!」
「わかった。他のメイドに相談しよう」
「ま、まってください。相談ですね。なんですか?」
「女になった理由を問いたい。今更だったが……勇者を倒せる気がしない」
「なるほど。ではお便りを見てみましょう」
*
「魔王様……大変、申し訳ありません」
「なんだ?」
「……魔王たちも悪乗りが過ぎたと謝っております。まぁ……その。頑張ってください。それだけでは倒せないでしょうと」
「……………………………うがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「誰か!! 魔王様がご乱心だぁ!!」
「ころっすうううう!! ぶっころおおおす!!」
*
「メイドたち!! 離せ!! 離すんだ!! 殺させろ!!」
「魔王様ダメです!! 側近が悪いわけでは……」
「そうです。魔王様!! お気を確かに!!」
「無駄にメスにされたワシはどうしろと言うのだ!!」
「……メイドになりましょう」
「そうです!! 勇者に負けた後も働けるようにしましょう」
「ぐぅ……お前らは負ける前提で話すのだな」
「…………」
「……一人にさせてくれ。今日の教育もいらん」
「わかりました……」
*
「えぐえぐ……ワシ。なんのために頑張ったんだ? 毎日毎日……」
ゴトン
「魔王様。魔王から贈り物です。部屋の前に置いておきます」
「くっ……プライベードも守られないほどだし。何だ?」
【変身セット】
「な、に、が!! 変身セットじゃああああああ!! あああ………あん?」
「手紙?」
「何々? 勇者の情報をまとめた物? フムフム。地図もある。転移の魔方陣だと!? 高等な……いや……次元が違う」
「フムフム………これを使い。勇者に会ってみようか……馬鹿馬鹿しい」
「弱体化した今のワシがあってどうなる。全く……」
「まぁ……しかし。相手を知るにはいい方法だ。ちょっと気分転換に現実逃避しよう」
「……厚い本もあるな。勇者のステータス表。強いな……能力も強いな」
「………これは!? お、恐ろしい」
「勇者のすべてが乗っている!? く、黒歴史さえ……お、おそろしい。魔王どもめ……よくもここまで恐ろしい事を調べあげたな」
「だが。まぁ……気分転換にはなったか……」
*
「魔王様!?」
「おう。料理長……」
「どうされましたか!?」
「いやな、色々と泣いてお腹が空いて。ちょっと何かをいただきにな」
「ああ……ご立腹でしたからね」
「厨房を借りても?」
「いえ。お作りします」
「いや……折角覚えた物で頑張るさ」
「わかりました。では……お手伝いします」
「うむ。助かる……」
「いやぁ……魔王様も包丁捌き上手くなりましたな」
「そうでもない」どやぁ
「いえいえ……最初に比べて……良くなりました」
「そ、そうか……うん。照れるな。まぁ……うん」
「どうかされました?」
「いや……砂糖はあるか? 小麦粉と」
「あります」
「じゃぁ……ちょっと分けてほしい」
「はい、お好きにどうぞ」
*
「側近……」
「魔王様? もう大丈夫なのですか?」
「ああ……取り乱してすまんかった。色々と頑張ってるのに申し訳ない事をした。これをやろう」
「……クッキーですか?」
「ああ。味わって喰えよ。ワシは事務を済ますよ。たまっているだろう?」
「私がしておりましたから。ご安心を……にしてもどういう心変わりですか?」
「いや……この姿で色々とあった事がな悪い事ばかりではないと思っただけだ」
「?」
「料理長にメイドに……色々とな」
「そうですか……」
「じゃぁな。側近」
「はい。お疲れさまです」
「お疲れさま」
「にしても……うーむ。クッキーですか……透視……!?」
「ま、魔王様の手作りだと!? あっ!? 転移魔法で盗まれた!!」
「魔王連め!! 返せ!! クッキー返せええええ!!」
側近の元にご馳走さまと言う手紙が一枚送られるのだった。