【連載】勇者が魔王を倒しに来ます。どうすれば愛し合えるのでしょうか?【緊急】
「側近……今日の話のだが」
「魔王様、なんでしょうか?」
「魔王になったが……近頃暗殺者……もとい勇者が生まれてしまった。このままでは我もそんな物に倒されてしまう。どうしたらいい? 側近よ」
寝室の部屋で魔王は問う。
「あの、魔王様それよりも聞きたいことがございます」
「なんだ?」
「鏡を見てください」
「鏡か……鏡ね……ふむ。今日も髪が癖がついてる。とかないと」
「魔王様!? 違います!! 胸を見てください」
ムニュウ
「うん。重たい。ブラジャーどこだったかな」
「魔王様? 魔王様? あれ?」
「どうした側近いつもの私じゃないか?」
側近が頭を抱えたあと。思い出そうとしても思い出せず。首を振る。
「いえ、なんでもないです。勇者ですか……」
「ああ、勇者……勇者……?」
魔王ちゃんは鏡の瞳を覗き込み頭を抱えしゃがみこむ。膨大なイメージが頭に入り込む。
「魔王様!? 大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だ……大丈夫。そうか……そうか……」
「何がありましたか?」
「……勇者の事は何も考えなくていい。大丈夫だろう」
「魔王様? 何かありましたか?」
「あった……すごくすごく長い夢を見ていたよ。男だった時の夢をな」
*
生きたまま勇者を捕らえろと言う指令を出し数ヵ月後。一人の男が魔王の元へと差し出される。
「お前らは下がれ。こいつと話がある」
「魔王様……くれぐれも拘束をはずさないように」
「ふん。はやく去れ」
私は久しぶりに出会った勇者の拘束を解く。
「名前はソルと言うよな」
「………」
「名前を覚えておらぬのか?」
「………」
「そうか……覚えていないのか……」
「勝った。フラム」
「ソル!? 覚えてたか!!」
「君を忘れる事なんてない。わざわざ捕まって会いに来た」
「ああ……そうか。ふふ」
私は彼を抱き締める。強く強く……求めるように。
「贅沢な贅沢な事なんだけど……ソルも欲しい」
「フラム。わかった……君を護るため頑張るよ」
「ん!! ありがとう」
その日から魔王の右腕に裏切り者と言われる人間が大きく大きく暗躍するのだった。そして……
*
世界を手に入れた魔王フラムはある人を探していた。
「ソル!! 覚えていることがあるな」
「ああ……覚えている。しかし、どうやって話をするんだ?」
「それは……ソルが知っている気がする」
「俺が?」
「ああ……私では無理だ」
「……俺が。そっか……そういえばあの人は」
寝室でソルがフラムに魔方陣を描くのをお願いする。絵柄は6枚の翼を描き、名前を入れる。
「該当者は絶対にあの人しか出ないようにしよう」
「大丈夫、女体化した魔王は私とあの人だけ」
二人が準備を進めそして。魔方陣を起動する。召喚術に近い物を。
「声だけでも来るかな? ソル」
「わからないが俺はこれで神様から討伐依頼を貰った」
「……ん!? 反応あり!!」
ポンッ
「紙?」
魔方陣の上に一枚の紙が現れる。メモ用紙だけが置かれておりそこには事細かい。新たな魔方陣が描かれていた。そして……裏に呪文も書かれており。発動方法も教えてもらったフラムはソルにその事をお願いする。
「……ああ、わかった。だけど……そのな。それは」
「早く会いたい」
「了解、頑張るよ」
フラムは喜び。ソルは深くため息を吐いた。せっかく用意した宝石箱をそのままヤケクソにフラムに手渡すのだった。
*
数ヵ月後。
「初めまして。勇者ですね。こんにちはソルです」
「ああ、初めまして。昔はな」
「そうですね。昔ですね。紹介します。嫁のフラムです」
「フラムです。こんにちは」
「こんにちは……では、紹介しよう。我が妻の……」
異世界で元勇者の集いと言う会にソルとフラムは参加し、6枚の翼を持つ魔王に出会えたのだった。




