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『7月弁当おにぎり部門一位』『7月菓子パン部門一位』
見慣れない二枚の表彰状がスタッフルームに増えていた。
「すごいですね。この地区で一位なんですね。駅前に大きいローソンがあるのに」
「この時期うちは東海地方で一位だからね」
「東海地方で! 忙しくなりそうですね」
店長はため息を吐いた、
「だから君に手伝ってもらっているのさ」
ローソンでは殆どを一つ年下の奥田と一緒に仕事をした。奥田は白く太った男だが清潔感がある。彼は初めこっちの出方を窺っていた。
「配達はこの画面から地域を選んで、まず何日後に届くかお客様に知らせて」
「わかりました」
おれは彼の必要なこと以外を喋らず教えてくれる姿勢が好きになっていった。むしろ無駄口はおれの担当だった。
「趣味は何ですか?」
「特に、思いつかないな」
面白い奴。彼はよく働くので彼よりも仕事をさせてはいけないというプライドが生まれていった。
「大丈夫か!」
オヤジは度々寝不足のおれに聞いた。気遣いは少しずつ意味合いが変わり注意になった。浜の勤務中に横たわる回数が増えた。体力的には全く問題なかった。ただ不真面目さを見せただけだった。客がいない時に腰を下ろし、オヤジが離れたときに腰を下ろし、誰も越せない売り上げに達したと思うと腰を下ろす。一番売っているおれが注意される必要があるのか? その時はまだ傲慢が疲れの正体だとは気づかなかった。