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浜の隣にはひっそりとした神社があった。神社を取り囲む深緑の桜は木漏れ日を作り、木々の間を気持ち良い潮風が通り抜けた。神社で寝るに当たりまず人目を気にした。参拝者は見なかったが、鳥居付近の仮設店舗で巫女さん二、三人がお守りを売っていたし、本堂に併設する大家屋は神主が住んでいることを想像させた。結局、灯台下暗し、賽銭箱の陰で寝た。二日目からは開き直ってビーチベッドを持ち込んで寝た。叱られたら変えればいいなんて考え方はだらしがないが、そう思わなきゃやってられない時もある。でもまあ、神社にビーチベッドだなんて乙じゃないか。どこかに隠されたスピーカーから笙の音色が聞こえて木の葉や蝉のざわめきと混ざり合うと、一瞬で落ちた。どんな催眠術よりも効くって具合だった。おれは寝ている間、無限に出てくる蚊に血を飲みたいだけ飲ませてやった。出血大サービスってね。