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この世とあの世の生活

この世とあの世の生活〜第9話〜

作者:福紙
すっきりと晴れた現世は爽やかな朝である。部屋の奥から、閻魔大王、こん助、白刃(しらは)が地獄の格好をして出てきた。

「やれやれ…荷車の予算やら何やら面倒だ…」

「閻魔様はハンコを押すだけでしょう?」

「馬鹿者!ちゃんと内容も読んでおるわ!」

「では、牛頭(ごず)が持って来た地獄送り名簿の…」

「よし、着替えるぞ」

「…やっぱりながら作業だったんですね…」

「やはりな」

とこん助と白刃はため息をついた。
着替えた一行は各々の行動をする。閻魔大王は茶を飲みながら朝刊を読み、こん助はタブレットで検索したり、白刃は窓の外を見ていた。ふと白刃は気がついた。

「閻魔様」

「何だ?」

「この透明な板は何ですか?」

「ぶふぉぉ?!」

と閻魔大王は飲んでいた茶を吹き出した。白刃は窓をコンコンと叩く。

「貴様!硝子(がらす)を知らぬのか?!」

「がらすと言う物ですか。いや…地獄にはないものではありませぬか」

「ぬ、ぬう…そうであるが…」

そう言えばそうかと閻魔大王は納得したが、生真面目な白刃なら現世の事を少し勉強しているだろうと思っていた。

「しかし…よくよく考えれば、地獄は時代遅れかもしれぬな」

「僕から見れば江戸時代初期の文明ですよ」

「そうだな…文明開化した明治時代に入れ替えればよかったかもな…」

「むぅ…がらすとは不思議なものだ」

「あんな獄卒どもがうじゃうじゃいると思うと…ぞっとしてきたぞ」

「閻魔様でもゾッとする事あるんですねぇ…」

と窓ガラスに興味を示す白刃の背を見つめる、閻魔大王とこん助。

あまりにも閻魔大王より現世を知らなすぎの白刃を見かね、閻魔大王とこん助は彼を連れてアパート周辺を散歩する事にした。もちろんルートはこん助がタブレットのナビゲーション機能を使って決めた。

「出かける前に白刃さん」

「何だ?」

「刀は置いて行ってください。現世で持って歩いてるか許可なく持っていると…捕まります!」

「何?!誰にだ?!」

「警察官と言う、現世の番人に。せめて妖術で隠してください」

「こん助よ、今更だが、(しゃく)は大丈夫よのぅ?」

「大丈夫です」

白刃は渋々妖術で刀を隠した。そしていつもの格好で3人は散歩を始めた。

「お散歩コースはここから近い公園から川の沿いを歩きます〜。森林公園なので森林浴できますよ〜」

「ほぅ。さすが便利の上に、なかなかの広さで家賃が安いとは」

「賃貸ですか。そう言えば現世と地獄に繋がるのに条件がよかったと聞きましたが…」

と白刃が閻魔大王に尋ねると、子供に化けたこん助が立ち止まった。

「こんなに便利なのに、お家賃安い理由…聞きたいですか…?」

と怪しく笑った。閻魔大王はクスクス笑う。

「あの部屋で、人間が死んだのだ…」

「そうですか。で、何故人間が死んだ部屋は安いのですか?」

「…貴様を獄卒としては優秀だが、本当に現世に無知だな…。裁きをしている時にあの部屋で死んだ者から聞いたのだ」

「僕らは平気ですけど、生きている人間は嫌じゃないですか…って、言っても白刃さんにはわからないですよね…」

と地獄の者だから平気な話である。10分程歩くと一角に森があった。

「ここが森林公園です」

「…閻魔様!!」

「…貴様の言いたい事はわかる。木が燃えていないと言う事だろう?」

「あと…!」

「…葉っぱが刃物じゃないって事ですよね?」

と閻魔大王とこん助は見抜いていた。3人は公園の中を歩く。

「清々しい気分ですね〜」

「人間はこうして癒しているのか…」

「川が煮えたぎっていない…」

と3人は林道になった公園内を歩く。と道の外れに池があった。

「血に染まってない…」

「白刃、貴様ここは現世ぞ。血に染まった池なんぞあったら…」

と言った瞬間、緑色に濁った水が見る見るうちに赤くなる。

「現世にも血の池はあるではないですか」

「馬鹿者!ある訳がなかろう!」

「ええええええ閻魔様!!あ、あれ!!」

とこん助は池の中央を指差した。するとそこには長い髪に白いワンピースの透けた女の幽霊が立っており、こちらを向いてニコリと笑った。「わー!!」と驚いて逃げるのは人間。しかし目の前にいるのは…。

「閻魔様!ほら、よく見てなかったじゃないですか!」

「ぬぅー?何の話かな…?」

「牛頭さんか馬頭(めず)さんの名簿見落としてましたね?!」

とバンドマン風の男2人と子供が怯えるどころか揉めている。見えてないのだろうかと、女の幽霊は近く。と閻魔大王は黒い(しゃく)でいきなりスパーンとビンタをした。

《ぶぼっ?!な、何するのよ!?って、あんたたち見えるんでしょ?!なのに何で驚かないのよ?!》

と言うと、閻魔大王は赤い瞳で睨みつける。

「驚く訳なかろう!私は地獄の主人、閻魔大王ぞ!!」

《嘘つけ!え、閻魔大王なんかこんなところにいるわけないじゃない!って言うか、ただの霊感の強いバンドマンでしょ?!》

と言うと、閻魔大王はまた黒い笏でビンタする。

《へぶしっ?!さっきからヘラで叩かないでくれる…?!え…?!何で私を叩けるのよ?!》

「だから私は閻魔大王ぞ!貴様こそ、こんな爽やかな朝っぱらから何している?!」

《い、いや…こんな池を見つけるレアな人がいるんだなって…》

と言うと、白刃が前に出る。

「ともかく、極楽への使者は着てないようなので、地獄に送りましょう」

「うむ。そうだな」

《ちょちょちょ…ちょっと待ってよ!いきなり何よ?!》

と言うと白刃は、

「申し訳ないが、あなたはここにいるべきではない。この閻魔大王様によってお裁きを受けなければ、(ことわり)に反してしまう。この世に未練はあるだろうが…閻魔様が聞いてくれる」

と丁寧に言う。すると、女の幽霊は納得したようだが、

「女よ、こやつは女たらしだ。それに私は真実しか見ぬ。言い分はほぼ聞かんぞ」

《何だとコノヤロー》

と台無しにした。するとこん助が閻魔大王を呼んだ。

「閻魔様!牛頭さんと馬頭さんを呼んできました!」

「地獄送り名簿に書いてあったので来れました」

「ごめんなさい。ここの草がおいしくて…」

《ぎゃああああーーー!!バケモノォォオォォー!!》

頭が牛と馬の牛頭と馬頭に女の幽霊は叫んだ。

「地獄に行ったら、そんな事言っている暇はないぞ。連れてけ」

《地獄に行きたくない!!お願い!地獄は…》

と牛頭と馬頭が女の幽霊を捕まえるとスッと消えていった。池の水はきれいに透き通っていた。

「なんか、興ざめしてしまいましたね」

「うむ…。こんびにに寄って帰るとするか」

「閻魔様…先程の女性の亡者の話を聞いてやって頂けませぬか…」

「いちいち聞いてられるか!全ては私の閻魔帳と浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)が真実だ!言い分など、ただの戯言(たわごと)にすぎん!」

「ですが…」

「白刃よ」

と閻魔大王は白刃を睨んだ。白刃はその赤い瞳にギョッとした。

「…そんなに女に優しくすると、杏慈(あんじ)に嫌われるぞ?」

「何故奴の名前が出てくるんですか?!」

「はっはっは!貴様はわかりやすいな。杏慈、と言葉が出た瞬間に取り乱す」

「もう顔に“大好き”って書いてますよねー?」

「こ、こん助!お前っ!!」

「さて、こんびにで杏慈に土産でも買うがよい」

「閻魔様!」

と清々しい朝のある風景だった。

ちなみにコンビニで売っていたおはじきとビー玉を強制的に買わされた。何でも売っているコンビニ。
牛頭さんと馬頭さんの地獄でのご飯は干し草なので、生の草はとってもおいしいらしいです。

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