烈
ふわふわとした、雲のような素材の床の上を歩く。何故、現在、ここにいるのか、どうして自分は歩いているのか、一向に思いだせない。
上を見上げると、どうやらここは屋外のようだ。雲ひとつない青空が広がっている。足下をみると、自分の影が、どこまでも長く、歩いていく方向を示すように伸びている。
ふむ、影の長さから推測すると、太陽が低い位置にある、つまり現在は、日の出直後か、日没前か。私は東か西か、どちらかに向かって、
太陽を背にして歩いている、ーということか。
不思議とそれ以上考える気にならず、また歩くことに没頭する。
しかし不幸なことに、彼が踏み出した次の一歩は、二度と地面に辿り着くことは無かった。
「救命阿ッ(助けて)!!!!」
雲を突き抜け、落下した彼は、何かに掴まろうと、咄嗟に太陽に手を伸ばした。
気を失う寸前に思い出す。
最期の瞬間、自分の頸に、ーぞぶりー。と食い込む太古の戦士の牙の感触を。
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もしそのとき、スカウターを用いて、東ゴルドー共和国、南の都を観測しているものがいたら、気がついただろう。突如として誕生した、新しい戦闘力は、この星の人間としては規格外の、500ほどはあっただろう。
中国拳法最高の称号「海王」の称号をもつ烈永周、『魔拳』烈 海王、二度目の誕生の瞬間であった。
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――のちに彼の母親シナは語る。
「ええ、喋ったんです。」
彼はいずれ、蟻の王となる。