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色々  作者: 千里三月記
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月の宮殿

「また、来てくれますか?」


別れ際に寂しげな顔を浮かべて毎回言う。

はて、これを言うのは誰だろうか。

散々に体を弄られ身勝手に果てられて、浮かぶ感情は怒りであり憤りであり悲しみであるべきだ。


もう慣れたもの。

名残惜しげに去っていく男を他人事のように見送ると、途端に糸が切れた操り人形のように床に崩れ落ちた。

膝を抱えてすすり泣いてみる。

自分の哀れな境遇に。

でももう慣れたもの。

それも他人事に思う。

冷めた心で別れ際の男の名残惜しげな目を思い出し、あの客はまた来るだろうと僅かばかりの達成感を覚える。


「ハハッ」


笑うしかない。

あの客で今日は最後。

だからいくら泣いても大丈夫、と打算が働く。


ーーなぜ、私は真面目に娼婦をやってるんだろうか?


他の人らと比べたらマシだ、と心は言う。

逆らえば殺される。見せしめに残虐に。

生皮を生きながらに剥がされて地下室に転がされるのは嫌だ。


立ち上がり外を見る。

他の建物より頭一つ抜き出た娼館の窓は小さいが、遠く王宮まで見渡せる。

月明かりを受けて鈍く輝く丸屋根。

月の宮殿(チャンドラ・マハル)を眺め思う。

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