とらんすぷらんと
子供の時っていうのは、こう、恐いもの知らずというか、今考えたらわけの分からない、少なくともメリットが一つもないようなイタズラをすることが多かった。
まあ、いわゆるいたずらっ子というやつだった。やんちゃ盛りというか。
色んなイタズラをやってきた幼少時の俺だったが、その中でも一番、性格の悪いイタズラがある。
きっと今暴露したら『不謹慎だ』とかなんだか言われそうなイタズラだ。
それは、小学校の屋上に花束を置く。というものだった。
小学校の屋上は勝手に入っていいものではなくて、入り口の前には沢山の余った机とイスが並べられていたが――よくそこにたむろって、友達と遊んでいた。子供にとっては秘密基地みたいなものだったのだ――なんと驚くことに鍵はかかっていなかったのだ。
俺自身もかかっているとばかり思っていたから、それに気づいた時は驚いたものだ。
気づいてからは外から見えないようにかがみこんで――ほとんど匍匐前進でもするかのようにして、屋上にでてはその状態で友達と話したりしていた。
誰も知らない秘密基地だった。
そんな秘密基地で、俺は一つのイタズラを思いついた。
それを実行するために、俺は花屋をやっていた自分家の商品である花を何本か盗んで、花束をつくった。
その花束を俺は誰かに渡すのでもなく、屋上に置いたのだ。落下防止用の金網の下には手が通せるぐらいの大きさの隙間があったから、金網の向こうに置いたのだ。
そう、俺はまるでここで誰かが死んだのかのように見えるようにする。というイタズラを敢行したのである。
今思いだしてみても性格が悪い。
道徳観念の薄い小学生だからこそ、簡単にできたのかもしれない。
それか、周りで誰かが死んだことのないあの頃だからこそ、なのかもしれない。
死という概念が存在しなかった、人は永遠に生きると勘違いしていたあの頃だったからこそ。
ともかく、子供の頃の俺はそんなイタズラを友達と一緒にやった。
俺たち以外誰も来ない屋上だったから、人に見つかることもなく、噂にもならずに俺もそんなイタズラをしたことさえ忘れてしまっていた。
思いだすことになったのは、その花束が発見された時のことだった。
いや、正確に言えば、花束が発見された時ではない。
花束がある屋上から飛び降りた同級生が発見された時――だった。
朝、校舎裏で発見された。
頭が潰れていたらしい。なくなっていたらしい。
同級生、更に言えば同じクラスだった彼女のことを、俺はよく知っていた。
クラスの中にヒエラルキーが出来て、ピラミッドがつくられはじめる頃合いのクラスに置いて、彼女はヒエラルキーの頂点、ピラミッドの尖った部分、つまり一軍に所属していた。
とはいえ、彼女自身が強かったわけではない。
彼女の友達が強かったのだ。
友達が一軍にいて、それのゴマすりをすることで一軍にいることを許可された。
つまり彼女は、友達のイエスマンなのである。
本来なら、三軍にいるような弱い立場の女子である。どうしてそこまでして、嫌な気分になってまで一軍にいたいのだろうか。女子の見栄の張り方はよく分からない。
そんな彼女が死んだ。
夜のうちに学校に忍び込んで、屋上から飛び降りたのだと判断された。
初めはイジメが疑われたけれども、一軍の彼女の友達はそれを否定した。
──私たちは学校にいなかった。それはお母さんが知っているはずだ。
私たちは友達だ。だからイジメたりなんかしていない。とは言わなかったところが、なんだか二人の最悪な関係性を物語っているようだった。
彼女の死は自殺として扱われて、俺らは体育館に集められて彼女の死を追悼した。
屋上は正式に鍵をかけられて、閉鎖された。
問題はその後すぐに気がついた。
屋上に花束を設置したままだ。
あれではまるで、彼女が死んだことを哀れんでいるようではないか。死ぬ前から、彼女が死ぬことを予言していたようではないか。
実際、あの花束を見た同級生が何人かいて、花束の噂はまたたくまに広まった。
俺は怖くなった。自分のイタズラが原因で彼女は死んだのではないかと考えてしまうほどに。
そんな訳はもちろんないのだけれど。
しかし子供というのは、エロ動画からの架空請求に本気で怖がったりするもので、ありえないことでも怖くなってしまうものなのだ。
だから俺は、子供の頃の俺は。
夜の学校に忍び込んで花束を回収することに決めた。
***
夜の学校は、なんだか昼の学校と雰囲気が違った。
昼の学校は人を吸い込むような雰囲気があるのに、夜の学校は人を突き放すような冷たさがある。
それはきっと、校門が閉じられているからだろう。
その校門を、俺は一緒に花束を置いた友達と乗り上がって、校庭に侵入する。
校庭の地面の砂を踏む音が、しっかりと耳に入った。
誰もいない。いつも騒がしい学校が、まるで廃墟のような静けさだった。
子供の頃の俺はごくりと息をのんだ。その音もよく聞こえていた。
もちろん、学校内に入ろうにも全ての出入り口には鍵がかかっていた。しかし、俺は侵入できる場所があることを知っていた。
職員室の前にある窓の一つに、ダンボールが貼りつけられている窓がある。そのダンボールをはがしてみると、窓が割れていた。誰かがボールかなにかをぶつけて割ったらしい。
らしい、というのはその犯人が誰なのか分からないからだ。それは、大人になった今も分かっていない。
俺はその穴に手を通すと、鍵を開いた。まるで、鍵を開けるために窓を割っているようだった。
学校に侵入した俺と友達はそのまま屋上へと向かった。
友達は途中で『呪の鏡』を見に行こうぜ。とか言っていたけれども、俺はそれを無視して屋上へとぐいぐい向かう。俺の目的は花束の回収であって、夜の学校の探索ではなかったからだ。
屋上の扉は、もちろんのことながら鍵がかかっていた。普通の鍵に加えて、ドアノブを縛るように鎖までつけてあった。
じゃあ、俺は一体どうやって屋上から花束を回収したのかといえば、屋上から一回下の階――四階から手を伸ばして、とったのだ。
無論、小学生の背丈である。廊下から手を伸ばした程度では屋上に手が届くはずもない。
だから窓を開けて、さんに足をかけて手を限界まで伸ばしたのだ。
落下防止のために、友達に両足を掴んで支えてもらった。
金網の向こう側に置いといたことが幸いしてか、ぎりぎり手が届いた。
指が引っかかって、花束は屋上から階下に落ちていく、後はあれを回収すればいい話だ。俺はほっと息を吐いた。
その瞬間だった。
俺らの視界が真っ白に包まれたのは。
それにビックリした俺は、バランスを崩した。もし、友達を連れてきていなかったら、二つ目の飛び降り死体が見つかることになっただろう。
視界が真っ白に包まれたのは、懐中電灯で照らされたからだった。廊下の向こうの方で、警備員の人が大声を張り上げていた。どうやら飛び降り自殺事件以降、夜の学校を警備員が徘徊するようになったらしい。
俺と友達は、勝手に校舎に入っていたからどやされると思って、すぐに逃げだした。
学校内というのはありがたいことに曲がり角がたくさんあるし、相手の視界外に逃げることだって簡単にできる。
いい年になっている体力が衰えた大人と、階段の五段飛ばしに躊躇がない体力全盛期な子供。その体力差は歴然だ。
階段ひとつをおりるだけでもかなりの距離を稼げるというものだ。
二階ぐらいを勢いよく降りていく。三階と四階の間にある踊り場で友達が「呪の鏡!」と息を切らしながら騒いだ。俺はそれを見る。それにうつっていたのは、俺だった。変哲もない、ただの鏡だ。
俺はアホらし、と思いながら階段を降りる。
三階には階段の隣に理科室があった。俺と友達は理科室の中に隠れることにした。ドアを閉じて、身を潜める。
廊下の方から、慌ただしく走る音と警備員が騒ぐ声が聞こえてきたが、不意にそれは消えた。走るのをやめて騒ぐのをやめたようだ。探すのを諦めたらしい。
俺と友達は目を合わせると、堰が切れたみたいに笑いかこぼれた。潜めていた体を持ち上げる。
視界をあげる。
俺の目の前に化物が現れた。
……。
いや、正確に言えば化物なんかではない。それは理科室でよく見る人体模型だった。
しかし電気ひとつついていない、目がなれたおかげでうっすらと見ることができる視界に、ぼやーっと肉がむき出しになっていて目が飛びだしている人が見えたら、誰だってびっくりするだろう。少なくとも子供の頃の俺と友達はびっくりした。
びっくりして、人体模型を押し倒してしまった。
逃げるのではなくて立ち向かうというのは中々どうして、子供の頃の俺は果敢な性格をしていたらしい。ぎゃーーっと騒ぎながら、女子みたいに両手で押し倒していなければ、きっとそれはカッコよかっただろうに。
人体模型は崩れた。
肺が、目玉が、脳みそが、心臓が、骨が、膵臓が、肝臓が、胃が、大腸が、小腸が、人体模型から飛びだして、辺りに散らばる。
派手な音がするものだから、俺と友達は警備員に見つかるのではないかと焦ったりしたのだけれど、あれだけの音がしたのに警備員はやってくることはなかった。結構遠くの方に行ったのだろうか。
胸をなでおろす。
友達の方を見てみると、なんだか「やってしまった」と言わんばかりの表情を浮かべていた。
俺はそれがどういうことなのか、さっぱり分からなかった。しかし、足元を見てみるとその意味がよく分かった。
俺の足の下と友達の足の下で、人体模型のパーツが壊れていたからだ。
友達の足の下は、骨。
俺の足の下は、心臓だった。
***
次の日である。
頭のない死体が学校で発見された。
死ぬすぎだろう、うちの学校。
首から先がなくなっていた。ねじ切ったみたいになくなっていた。
第一発見者は、誰よりもはやく学校に来ることを一種のステータスだと思っていた生徒の一人だった。
校門が開く前から寒い空の下待機していて、そのご褒美が変死死体の発見なのだから、やるせない。その子はそれ以降、学校にくることがなくなった。
皆勤賞とか、一番最初にクラスにいるとか、そういう勲章を投げ捨てたくなるような出来事だったのだろう。
死んでいたのは、服装からして警備員のおっさんだったらしい。
死体があったのは、三階の二年四組の前――あの、理科室の隣の教室である。
走る音と騒ぐ声が不意に消えたのは、そのせいだったのだ。つまり、俺と友達はドア一枚挟んで、人殺しの現場に立ち会ったとさえ言えるのだ。
俺と友達は恐くなった。なぜなら警備員が殺された時、学校にいたのは俺と友達と──その犯人だけだからである。
このことが知られたら、警察に自分たちが犯人だと疑われてしまうかもしれないし、犯人に目撃した可能性を理由に殺されてしまうかもしれなかったからだ。
だから俺と友達は夜の学校に忍び込んだことを人に話すことをタヴーにした。まあ、元々夜の学校に忍び込んだ。なんて、人に話したら怒られるだろうから隠しておくつもりだったんだけど。
俺らは体育館に集められることはなくて、追悼することもなかった。けど、誰も二年四組の教室の前を横切ることをしなくなった。
理科室に行くときはわざわざ二階か四階に移動したりしていた。
しばらくして、友達は学校に来なくなった。近くで人が死んだ──殺された。
『人は死ぬ』という事実を飛び越えて『人は殺せる』という事実を知ってしまった彼は、人と関わることをやめてしまったのかもしれない。
当時の俺はそこまでのことは考えていなかったけど。単純に、学校から逃げたのだ。ぐらいにしか考えていなかったけれど。
一週間、二週間も学校に来なくなると、プリントがたまるものだ。
俺は先生に、友達にプリントを渡してきてくれないか。と頼まれた。先生が何度か足を運んだらしいけれど反応してくれなかったらしいのだ。
友達の友達である俺なら、反応も示してくれるだろう。そういう考えのもとらしい。
俺はその日の放課後友達の家へと向かった。
友達の家は特筆する必要もないぐらい、普通の家だ。
インターホンを鳴らす。時間もそこまでかからないうちに、ドアが開いた。出迎えてくれたのは友達の母親だった。
俺がプリントを持ってきたと伝えると、母親は俺に家にあがらないか。と尋ねてきた。
それは『尋ねてきた』というよりは『お願い』だったかもしれない。
もしくは命令。
友達なら、それぐらいしてくれるよな? という命令。
俺は変だな。と思いつつもそれを了承した。一階には友達はいなかった。母親の話によると、数日前から自分の部屋からでてこなくなったらしいのだ。
自分の部屋から出てこなくなった日は、学校に行かなくなった日とはまた別の日らしい。つまり、それとこれとは原因が違うと考えていいだろう。
俺は母親からジュースとおかしがのったお盆を受け取ると、そのまま二階へと向かった。
ギイ。ギイ。
歩くたびに階段がなる。
二階につく。
息を吐く。吸う。吐く。吐く。吐く。
重苦しかった。
滅入ってしまいそうだった。
俺はドアをノックして、友達の名前を呼んだ。
友達はしばらくしてから、俺の名前を呼び返してきた。入ってこいよ。とも言ってきた。
俺はお盆を片手に持ち替えて、ドアを開く。
友達はベットの上に座っていた。上半身を持ち上げて、下半身はかけ布団に隠されている。
友達の様子を俺は無言のまま確認する。ここ数日引きこもっていると聞いていたが、見た目にはそこまで変化が見られなかった。食事とかはしっかりとっていた。ということなのだろう。
どうして、学校にこない? と俺は尋ねた。理由は分かりきっているのに。だ。
しかし、友達は。
――別に、警備員が原因じゃあない。
と、少し予想外な返答をしてきたのだ。
警備員が原因じゃあない。
あの日。とか、あの夜。とか、そういう言い回しではないことに、俺はもう少し違和感を持つべきだったかもしれない。
――あの日さ、『呪の鏡』の前、横切ったろ。
言われてから、俺はそう言えばそんなこともあったな。と思いだす。一番の目的ではなかったし、ホントに横切っただけだから、記憶の片隅に置いておいただけだったのだ。
そう言えば、通ったっけ。
俺は今思いだしたことを隠そうともせずに答えた。友達は困ったように笑った。呆れたようでもいいかもしれない。
――じゃあ、あの鏡になにが写ってたか、見てないんだな。
なにが? 鏡には俺がうつってたぞ。
――否堀小瑠璃。クラスメイトがうつってた。
俺は、その名前に聞き覚えはなかった。後から調べて分かったんだが、同じクラスの三軍の陰鬱女子だったようだ。
どういうことか、否堀にも尋ねてみたかったが、様子が妙におかしいというか、怯えているというか、刃物を持たせたらまず間違いなく刺してきそうな雰囲気があって、ついには話しかけることができなかった。
小学生の筆箱には必ずと言ってもいいほど、刃物が入っているのだ。
学校を卒業してからのそいつの情報は知らない。
一体、なにをしているんだろうか。
否堀小瑠璃。彼女の名前がこの時どうしてでてきたのかは、ついには分からずじまいだった。
それを見たから、学校に来ないのか? 俺は尋ねた。友達はかぶりと振る。
――確認。お前が俺と同じ状況になってないってことは、なにか違う理由があると思って。
同じ状況? 学校に行っていない、引きこもりの状況にか?
――いや。
友達はかけ布団を外した。
その足は、人の足だと形容するのが不可能なぐらいぐずぐずになっていた。
まるで、どかされたかけ布団みたいに、薄かった。
足の骨だけを体内から取り外したみたいに、支えがなくなっていた。
――体が、おかしくなってるかどうか。
***
…………。
どうして、こんな昔のことを思いだしてしまったのだろう。
どうして俺は、学校の前に立っているのだろう。
夜の学校は、昔と変わらずなにものも寄せつけない、暗い暗い冷ややかな空気をまとっている。
息を吸った。吐いた。ポケットの中にあるものを、握りしめる。
周りからは音ひとつしない。まるで、音がどこかに吸い取られてしまったかのように。
よし。
俺は校門に手をかけた。大人にもなって、なにかをよじ登るというのはなにか気恥ずかしいものがあった。
ん? と首を傾げる。なぜなら──。
後ろから、誰かが、見ている。
振り向く。
いない。
誰もいない。
けれど、頭の中にはどういうわけか『否堀小瑠璃』の名前が浮かび上がっていた。
じっとりとした冷たい汗が、夜風に揺らされる。
校門に手をかけた。校門には、鍵がかかっていなかった。どういうことだ?
疑問を覚えつつも、俺は学校内に侵入する。校舎の鍵も閉まっていなかった。
まるで、冷ややかな校舎が俺を迎えているようだった。
いつまで経ってもやってこなかった俺を、歓迎しているようだった。
階段を昇る。改築をしたという話は聞いたことがないから、場所も変わっていないだろう。
目的の場所は三階だったが、俺は階段を少しだけ昇って三階と四階の間にある踊り場に向かった。
『呪の鏡』がある踊り場だ。
鏡の前に立つ。俺の首から下がうつっていた。
子供の背丈に合わせて設置されている鏡は、大人になった俺の顔をうつすことを拒否していた。
しゃがんで全身をうつそうとは、考えなかった。
階段をおりる。
三階の理科室の前に立った。
隣の教室は二年四組ではなくて、四年一組になっていた。その前にある廊下は、キレイそのものだった。
理科室のドアに手をかける。警備員がやってくるかもしれないから、はやめに済ませることにしよう。
がらり、と引き戸式のドアを開くと、理科室特有の薬品の匂いが飛び込んできた。この匂いは、あまり好きではない。
ポケットの中にあるものを取りだしながら、俺は目的のものを探して理科室の中を歩く。ぼやーっとした視界に、人体模型は入り込んできた。
昔はこれを化物かなにかと勘違いして倒してしまったが、今回はこれを探していたのだから、驚くほどのことはない。
しゃがみこんで、それを確認する。
肺が、目玉が、脳みそが、心臓が、骨が、膵臓が、肝臓が、胃が、大腸が、小腸がある。
人体模型の体の中身は、全部もとに戻っている。
緊張の糸がぷつりと切れた感覚がどこかでした。握りしめていた手のひらが緩んで、通販サイトで買った人体模型の心臓パーツが、理科室の床に落ちた。
コーン、と音がして転がる。おうとつのある形をしているからそこまで転がることなく止まった。
「そうだよな。そんな訳、ないよな」
強ばっていた肩が力を抜いていくのを感じた。顔も緩み切っている。
そうだ、呪いなんて、あるはずがない。
俺は地面に落とした心臓パーツを手に取って理科室を後にした。
***
引き戸は閉じられた。
少しだけうるさくなっていた理科室に、無音が訪れる。
しかし、すぐにまた音がした。
それは引き戸の外からだった。
引き戸の外からなにかが倒れる音がした。
ごぽっ、と音がして、人体模型のパーツの間から赤い液体が溢れた。
パーツは少しだけ揺れていた。それはまるで、心臓の鼓動につられているようだった。