光星詩絵 生前
光星詩絵の生涯は、十四年で終わった。
七月六日の誕生日を迎えたばかりの中学二年生の彼女は、学校が終わってから十八時までの間、最寄り駅のゲームセンターで遊ぶのが日課であった。
各種ガンシューティング系を始めとして、UFOキャッチャー、音ゲー、メダル落としと、彼女の遊ぶ台は多岐に渡っており、ほとんどの常連客とは顔見知りである。
両親がどんな願いを篭めて付けたものか、大人しそうな名前とは裏腹に、彼女は活動的かつ陽気な性格であった。当然ながら友人も多く、今日も仲の良い学友と、ゲームセンターの店員に追い出される十八時まで遊び倒した。
「早いところ高校生になりたいぜ」
ここ最近の口癖である。近場のゲームセンターは、風営法やら条例やらの遵法精神が強く、十六歳未満の学生を十八時きっかりに追い出してしまうのだった。ほんの二時間あまりでは満足に遊んだ気がせず、詩絵はそれが不満だった。
男勝りの口調で、数人のグループを先導して歩く彼女は、小柄ながらも群れのボスであった。大人受けも良い彼女は地元ではそれなりの顔であり、帰り道に商店街を歩いていると、駄菓子屋や焼き鳥屋のおじちゃんおばちゃんが次々に買い食いを勧めてくる。
「ネギマと、なんこつと、あとモモと、何にするかなー」
個人経営の商店が多い、言い換えれば昔ながらの商売をやっている年寄りが多い平和な商店街である。どっさりとおまけを付けてもらった彼女は、惜しみなくそれを友人たちと分け合うのだった。
一歩間違えれば不良と呼ばれかねない日常であったが、本人にその意識はなく、実際に健全に遊んでもいた。両親とも仲は良く、悩みといえば金策ぐらいである。楽しく遊ぶためには、それなりの出費も必要なのだ。
「明日も昼ご飯は、あんパン一個かな」
友人たちと別れ、一人になった家路で彼女は呟く。
毎月の小遣いに加え、両親からもらっている学食代を浮かすことで遊興費を捻出しているのである。
明日はゲームセンターのどの台で遊ぼうかと考えつつ、鼻歌まじりに一人家路を歩いていた彼女は、商店街からさほど離れていない交差点でトラックに撥ねられた。飲酒を伴う危険運転が起こした惨劇などというフレーズで、翌朝の新聞やニュースを賑わせることなど、彼女には知る由もないことであった。
全身に走る衝撃と、地に足がついていない浮遊感。
暴走運転を楽しむ体感ゲームのことを思い出したのが、現世での最後の思考だった。