表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/85

何が自分を繋ぎとめていたのかの回答 02

 珈琲おごるよ、と自販機に向かうと、いえワタシにおごらせてください、とその手を押しとどめる。

 珈琲の湯気ごしに、ルディーは腕をのばした。

「握手していいですか」

 がっしりした手も、傷だらけだった、がその手は暖かかった。

「一緒にお仕事ができてよかった」

「オレもだよ、ありがとう」

 すっかりくつろいだ様子で、ルディーは席についていた。

 しばらくは、今回の件についての技術的な話が続いたが、ふと話が途切れた時、彼が唐突に聞いた。

「アナタは、神を信じますか?」

 外国人が日本人にこの質問をするのは、昔よくあったジョークだ、と言ってやると少し笑った。

「知ってますよ、でも今は真面目に聞いてます」

「……そうだな」彼は言葉を選んだ。

「普通は仏教徒だ、と答えるところだが、実は宗教を持っていないのかもな」

 宗教とは難しい。宗教は生きるための拠り所であって、生きるための道具としてはいけないと思う。宗教が道具と化した時に、争いがおこり、権力が発生するのではないか。

「だから逆に、心のよりどころになるものならば、そしてそれで自分や周りの状況が少しでも良くなっていくのならば、どんな宗教でもいいんだと思う」

 ナチュラル・マインドのターミナルで、彼の祈祷によって最期の時を迎えた女性の姿が、目に浮かんだ。


 あれはオレたちにとっては間違いだった。しかし、彼女にとってはどうだったのか。


 ルディーが思い出したように口にした。

「日本でキリスト教を語る時に、時々聞きました、『信じる者は救われる』という言葉。

 聖書などには直接この表現はないと思いますが、慣用句としてよく使うのでしょう?」

「『信じる者は、救われる』……

 その言葉じたい、オレには信じられないね」

「そう言うことでしたら、アナタが信じるのは、アナタ自身かもしれません」

「『オレ教』ってのがあったら、そこの副教主くらいまでいってるだろう、邪教だろうがね」

「そうですか」ルディーは、うすく笑った。いやな感じではなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ