「彼は約束は守る」 02
彼ら警官は、何かの機械をもってまっすぐ、寝転んでいるサンライズに向かって歩いてきた。
「あなた、ちょっと何してるの」
「え、寝てますけど」
「話聞かせて。起きられるの?」
酔っぱらいのオッサンに対する口のきき方だ。もう一人の警官も
「ちょっと、車で行くから、署まで来てくれるかな」
何か言い方は優しいがもうすでに彼に手をかけている。
見ていたミツヨカワ、さすがに焦って
「何なんだ、キミたちは。彼は教団の信者ですよ。どこに連れて行くんだ」
と抗議。
「あなたは、責任者?」
問われてミツヨカワは偉そうにうなずいた。そして
「変な連中に突然縛られたのだ。信者を二人さらう、と脅された。彼らを逮捕して欲しい」だと。
「そうですか?」
警官は顔を見合わせたが、やっぱりサンライズを連れて行くことに決めたらしい。
「最初にこの人から事情を聞きます」
「なぜだ!」
ミツヨカワが絶叫する。
「ご存知なかった?」警官の一人が言った。
「かなり強い電波を出してるよ、電波法第一〇八条の二に違反した疑いがあるんで」
「あなた連絡先は? 免許証あります?」
警官が数名、ぱらぱらと走ってきた。それでも教団関係者の縄を不器用にほどいてやっている。
追ってきた男たちはスタンガンやスコープ、ゴーグルなどをさりげなく上着のポケットに隠し、知らん顔を決め込んでいた。
警官隊の中の一人が、MIROCの班長にそっと手を挙げた。
サンライズは腕を取られながら、哀しげに訴えた。
「待ってください、そこの汚いオヤジもデンパ仲間なんですが」
「はあ? オレかよ」
レゲエなオッサン仲間がようやく立ち上がった。
「分かったよ、一緒に行ってやる」
サンライズにもたれかかるように立っているが、今にも転びそう。警官が二名、あわてて手を出したがあまりの汚さにまた手をひっこめた。
「ブタバコに早く、入りてえなあ」
班長が、そっとサンライズ達に寄りそった。
「お疲れさまでした」
「ああ」
「何かあったら聞いておきますが」
ジャカードが、リュックの場所を簡単に伝えた。
味方は、一斉に足並みをそろえ、音もなく闇の中に消えた。
指をくわえて見送るミツヨカワたちの前から、警官隊に引かれて、サンライズとジャカードも退場。
月はかなり西の山に傾き、すでに東の空が白み始めていた。




