「彼は約束は守る」 01
「アナタがたは、お連れ様なんですか? どこから入り込んだのですか?」
組織のことを言っているらしい。
「忘れました」そばの一人が殴りつけようとして、ミツヨカワに止められた。
「料理はあとでゆっくりできます。残念ですが、オダももう帰してしまいましたからね。帰ってからじっくりと……骨までコトコト、煮込みましょう」
楽しみですね、と車に戻りかけた時
「そのまま動くな」すぐ近くで、はっきりした声がした。
ミツヨカワが、はっとふり返る。
と、見る間に森の陰から迷彩色の男たちが走り出て、彼らを包囲した。
「手をあげて」
暗がりでもサンライズとジャカードには分かった。MIROCだ。
教団の追手たちは追跡には慣れていたが、戦闘にはまるで向いていなかった。みるみるうちに形勢逆転。みな縛られていく。
ミツヨカワは普段ののんびりしたもの言いだったが、目が飛び出しそうだ。
「な、なんですかキミたちは?警察ですか」
一人が前に進み出た。班長らしい。
「似たようなものだ、彼らを返してもらいます」
「返せ、だと?」
精一杯の威厳をもって、副教主様はのたまう。
「彼らは教団に属した信者ですよ。誓約書もある。
『無断で教団の修行所から出た場合は、強制的な方法で帰還させられ、その際に何らかの傷害等負った場合でも、教団は一切責任を負わないことを確認し了承します…』とね」
どうしても、と言うならいったん施設に戻してから、ご本人様がたに意向を確認させて頂きますが、今夜の所はお引き取りを、と偉そうに述べた。
「それと、この縄をほどいていただかないと、今度はアナタがたも訴えますよ」
急に彼らの車の後方から、けたたましいサイレン音がした。拡声器の割れた声が
「全員、その場から動かないでください」
と近づいてきた。
「警察?」
ミツヨカワはそれでも、まだ落ち着いた風を装っている。
今度は制服の警官が二名、車から降りてきた。
後ろから更に一台、白黒の日産キャラバン。狭い道はあっという間に大渋滞となった。




