「任務は何だ? サンライズ」 01
小型のリュックをジャカードに背負わせ、自分は彼を背負い、森の中に分け入っていく。
最初はかすかにけもの道がついていたが、そのうちに地面が少し柔らかくなり、足がめり込むようになった。
「道がない」サンライズは息を弾ませながら立ち止まる。
「だいじょうぶ、少し先、右側に大きな倒木があるはずだ」
ようやく、倒木にたどり着いた。
「下ろしてくれ」
地面に降りたジャカードは、腕を使って器用に倒木の近くまで這い寄ると、根元近くの空洞に手を突っ込んだ。
プラ袋に包まれた資料が一式、そこから現れた。
「無事だったな」
「ああ」
2人はしばし、倒木に寄りかかって休んだ。
サンライズがリュックからペットボトルのお茶を出した。
「飲んでくれ、ジャカード」
キャップをひねって開けて渡す。
「いや、オマエから飲めよ、オレは車に乗ってきたから喉は乾いてない」
「じゃあ半分」
サンライズはきっちり半分まで飲むと、きゅっと飲み口を拭いて彼に手渡した。
ジャカードもうまそうに飲みほした。
「前回は、この後がまずかったんだよな」
まるで全然反省してない反省会の子どものようにからっとした口調で、ジャカードが言った。本来の彼が、戻ってきたらしい。
「どうしたんだ、この間は」
「ここからまっすぐ左、つまり西に向かうと500メートルほどで私道にぶつかる。そこを更に南西にたどると、県道71に着くんだ。こないだは焦り過ぎた、すぐに県道に出ようと、私道まで歩いて行ってそこからすぐ県道に向かった。そこで待ち構えてたヤツらに捕まったんだ」
私道を逆に、北東に行けばしばらくは森の中だがそのうちに高台に出て、他の道も見つけられただろうに、と残念そうにつぶやく。
サンライズを見て
「今度はどうする? 北東に行ってみるか」と聞くので
「そうだな……」
サンライズは、詰所から持ち出した目ざまし時計を出してみた。
「もう0時になる。じきに交代が来て脱走がバレるな」




