「支部の方ですか?」(言ってない) 04
おむすびが残っていたので、2人でわしづかみにしてガツガツと呑み込んだ。中身はやっぱりオカカだった。
途中、あっと気がついて一つ手に持ってまた下に走って下りる。
手前の房のドアをそっと開けてから
「おむすび、ここに置きましたから」
一応、声をかけて「鍵、開いてますからね」教えてまた上に戻った。すぐに出てくる様子はなかった。
ジャカードは、どうにか上着のジッパーを上げていた。
サンライズも急に寒さを覚え、看守の残してあったジャンパーを一枚羽織った。
「あの、もう1人の囚人は誰か知ってるか?」ジャカードに聞いたが
「……オレより後に入ったのは知ってるが、誰かは判らん」
多分、まだ日数を数えていた頃なので、自分が清め場に入ってから1ヶ月は経っていなかったのでは、と言った。
「後で助けてもらうしかないか……」
看守詰所の時計を見る。22時を少し回っていた。
「あと2時間くらいで交代だと思う」
サンライズは、詰所の中を家探ししながら言った。
「どこまで逃げられるか……地理に詳しいか?」
ジャカードはずっと黙ったままだった。
眠ってしまったのか、と思って顔をみると、何か考えているような目をこちらに向けていた。
「どうした?」
「テストしたい、悪いが」来ると思ったよ、サンライズは大きく息をつく。
「どうぞ、早く頼む」
「支部で特務課直属の課長は」
「ノギ」
「特務部の部長は」
「うちのとこは、技術部だ」わざと間違えているのだろう。
「支部の部長は、ポチ、いやええとスゲさん」
そこまで聞くと、彼はにやりと笑って片手を出して握手を求めた。
「ポチは昔オレのチームにいた。名付け親は、オレだ」オマエかよ! でも握手。
「今から資料を隠した場所に案内する」
おむすびを食べたおかげで、前より軽々とおんぶできた気がする。
サンライズとジャカードは、動き出した。




