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「支部の方ですか?」(言ってない) 01

 一気に勝負をかけることにしよう。次の食事が運ばれてきた音で、彼は決心する。

 遅かれ早かれ、やらねばならないことだ。

 前の二つの房に食事が入った。次に自分の房、上の窓から光が入る。

「食事です」

 壁まで下がり、ゆっくりと呼吸を落ち着ける。まずスキャンを試す。

 くっきりとした映像。できたぞ、自信を持て……懐中電灯に急に照らされ、顔をしかめた自分の立ち姿がみえた。

 ひどいもんだ。あんな風に見えるんだな。

 少しは憐みを感じているのか、縁がふるえている。

 ―― 暑い、ここは臭いな(それはオレも同感)、今日は早く帰れるかなあと3時間で交代、祈祷がなければすぐ戻れる……

 スキャンの感覚が、完璧に戻っていた。これならばできるかもしれない。

 しかし今は食事が先だ。下の小窓が閉じると、残像があるうちに急いで食器に近寄り、パンとスープを口にする。数秒で食事は済んだ。それでも、ここでいただく最後のディナーだから、ととりあえずはよく噛んでみた。

 間もなく、食器の回収がきた。よかった、さっきと同じヤツだから思考パターンが読み易い。

 サンライズはあえてスープの器を後ろ手に隠しておいた。

 案の定、看守が硬い声で言う。

「スープのお椀を返してください」

 サンライズは、まぶしさの中で目をしっかりと開いて、はっきりとこう告げた。

「金色の縁取りが、みえるか」

 かかった。看守の動きを完全に捕えた。

 彼の思念波は、今やサンライズの繰り出した釣り針を心の奥まで呑み込んでいた。

 強い曳きに、彼は必死に耐えて次の攻撃。

「金色の縁取りが、見える、オマエの心の中に」

「きんいろ、の、ふちどり」懐中電灯の輪が少しそれた。暗闇に赤黒い残像がちらついた。

「目の前のドアの、鍵を外して、ドアを開けろ」

 効いただろうか?


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