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「清掃します、洗いますか?」 01

 食事はそれまで3回運ばれた。その間、彼はずっと音だけ聴いてすごした。

 食事は3回だったが、まる1日というには、時間的にあまりにも長すぎる気がした。

 彼は食事をむさぼった。パンもスープも酸っぱいような気がする。しかも腹には満たなかったが、死なないために、ただ食べていた。

 それでも、ジャカードの入っている場所はわかった。それともう1人の囚人。

 音の聞こえ方からして、自分の隣、入り口に近い方に入っているのがジャカードで、その向かいが別の1人だろう。食事の時間は三者とも同じだった。

 運動は欠かすことなく続けた。

 摂取カロリーが少ないので、激しい運動は逆効果だろうが、ジャカードのように動けなくなっても困る。毎日、決まったメニューだけを確実にこなした。

 ふと、同室のアサダがやっていた変な体操を思い出した。あれですら遠い夢のようだ。彼はあの後、だいじょうぶだったのだろうか? それと、ジョウガシマは?

 知り合いだと言ってたな、どんな事情があったのだろう。それも、今は知りようがない。

 唯一、ここには送られてこないのが慰めかもしれない。

 排泄物の問題が一番の悩みになってきた。食べる量は減ったが、出る物は出る。

 排水口の蓋を外してみようとしたが、固くてどうにもできない。水がないのが辛い。

 食事の時しか水が手に入らないので、軽い脱水症状が出て来た。

 最後の手段で、出たものを飲むしかないか、何度かそこまで思った時、また階段を降りる音がした。

 手前の房に、明かりが射しこんだようだ。

「清掃します。壁に寄って、後ろ向き、洗いますか?」

 何か答えたような声がした、と、激しい水音が響き、しばらくはそれが高くなったり低くなったり続いていた。

「一歩右、前向いて」また水音が響く。

 次はその向かいの房の番だった。サンライズはのぞける限り首を伸ばして様子をみた。

 看守たちは同じ手順で、淡々と作業していた。

 次はここか、あわてて下がる。

 食事の時と同じく、上の窓から光が射した。


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