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「彼のためなら死ねる」

 ルディーは、支部特務課のフロア一角で、ボビーと睨み合っていた。


 聞いていた通り、ボビーは仕事では優秀らしかった。

 今回は変装の事でも、細かく色々と世話になっていた。日本人のこの年齢の独身で、与太者の兄に悩む男がだいたいどんな持ち物でどんな服装をするのか、アオキミツヒコという人物に肉付けしてくれたのも彼だ。

 しかし、今回ばかりはルディーは頑なだった。

「絶対に、ダメです」

「なぜ」

「アナタは今回、チームに登録されていない」

「サポートしてるわよ」

「バックヤードと現場では話が違う」

「アンタこそ解ってないわね」

 飛び散る火花を、遠巻きにして野次馬が何人も眺めている。

「アタシは、元々彼のパートナーよ」ルディーが「えっ?」て顔をしたので、あわててつけ加える。「……仕事でよ、仕事の。バカ。彼はフツウだもん」

 ルディーも赤くなったが、きっぱりとした態度は変わらない。

「現地には、ワタシとシヴァが行く。あと30名借りるので不足はありません。アナタはバックヤードの支援を続けてお願いします」

「偉そうに」

 ボビーはせせら笑った。

「元もとは、アンタのリーダーを助けるために行ったのに。ここで何かあったらどうするつもり? また、支部のヤツらがしくじった、って言って尻まくって逃げるんでしょう」

「そんなことはありません」

「ブガイシャのくせに」この言葉には、さすがに穏健なルディーもかっとなる。

「アンタこそブガイシャだろう」

 ルディーは吐き捨てるように言った。

「他人のミッションにいちいち口を挟まないで頂きたい」

 ボビーは、じっと目の前の男を見つめていた。今にも炎を噴きそうだ。

 見つめたまま、声を落として言った。

「彼にもしものことがあったら……アンタを殺す」

「いいですよ、でも言わせてください」

 ルディーは大きく一歩、ボビーの方に踏み出した。傷跡が醜くゆがんだ。

「私が死んで彼が助かるのならば、命はぜんぜん惜しくありません」

 ここ3ヶ月以上サンライズ・リーダーの下で働き、会える時はほとんどなかったが、いつも心には彼の姿があった。

 ジャカードもいいリーダーだが、仕事を超えて、生き方そのものに影響を与えたボスというのは、彼の戦いにまみれた人生の中でも希有の存在だった。

「私は、彼のためなら死ねます」

「……そういう宗教なの?」

 しかし、ボビーの口調にはもう毒はなかった。

「分かったわ。気をつけて。必ず連れ帰るのよ」



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