「今は何月何日だ?」 01
降りてから10メートルくらいか、歩いて20歩弱、両脇にそれぞれ、2部屋ずつついているらしい。左奥にあるドアの前で、彼らは立ち止まった。
黙ったまま彼らは、アオキを中に押し込んで、ばたんとドアを閉めた。
暗闇が、重い空気となってぴったりと彼にまとわりついた。
じっとりと汗ばむような熱気と、行き場のない排泄物の臭気がさらに覆いかぶさってくる。
しばらくは何も気にならず床に伸びていたが、ようやく殴られたショックから立ち直る。
彼はよろめきながら起き上った。
すり足のまま、ドアの前に立ってみた。手さぐりで、部屋をさぐる。
ドアの上部、目の高さあたりにレンガほどの大きさの穴があいていた。鉄棒が3本、縦に入っている。一応通路は見えているのだろうが、今は全く何も見えない。
そのままずっとドアをなでていく。
下の方にも同じような穴。鉄格子はないが、外側に蓋がついているらしく、ぴったりとふさがれていた。
床は少し、柔らかい感じでなんとなく湿っていた。
立ちあがって手を伸ばすと、すぐに天井に触れた。頭の上40センチもないくらいか。
次に壁にそって、手を伸ばしながらゆっくりと一周。壁もやや柔らかい素材、ぬめるような感触に思わず手をひっこめる。しかし我慢して人差指だけ使って回った。
天井もだいたいの所に触れてみた。
空間の中を一通りさぐってみて気づいたが、照明や余分なスイッチ、換気口の類は一切ない。
ただ一か所、床の片隅に排水溝らしい小さな金具の蓋を感じた。
広さはおおよそ、幅が2メートル、奥行きが4メートル、高さが2メートルあるかという程度。
服の裾で指を拭きながら、更に耳をすませる。
他に2人、どこかの部屋にいるというのだろうか、しかし物音一つしない。
見張りすら、建物の中には立たないようだ。
部屋の真ん中、と思われるあたりに座り、心を落ち着けて目をつぶる。
ここに来てから、初めて積極的に心の触手を伸ばしてみた。




