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「(必ず読めよ)」

 なぜか近頃夜も絶好調なアサダにジャマされつつも、彼はひたすらテキストに赤線を引き続けた。


 ワタナベには、あれから会っていない。


 ずっと心にひっかかっていた、助けてやりたかった。

 任務はまだほとんど手つかずだというのに。

 しかも広報という立場上、教義を皆の前で朗読したりスピーチをすることが増えてきた。信じてもいないことをペラペラと語り、それによって自らの信仰心を更に深めている人たちが何人も目の前にいるかと思うと頭をかきむしりたくなって、居てもたってもいられなくなる。

 しかし、今やっていることが必ずワタナべや他の信者たちのためにもなると信じて、やるしかなかった。


 前日の昼にはどうにか作業が間に合い、彼は3冊の本を紙袋におさめ、事務局に持って行った。手紙はつけなかった。つけても無駄だろうから。


 ルディーは前回よりもさらにやつれたように見えたが、アオキからの合図はすぐ気がついた。さりげなく髪をかき上げて耳たぶを掻いてみせた時、大きくうなずいたのだ。

「教主様のお言葉が分かりやすく説明されていると思います。私も気になった場所に線を引きました。ぜひ、読んでみてください」

「ありがとう、読んでみる」

「厚い本は、次回の面談で返してもらっていいですか。まだ私もよく読み解いてない部分があって、もう少し勉強したいので」

「わかった」


 有効なメッセージが、初めて渡された。


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