「……最後の手段だということですから」 01
<十月九日(金)JAGは見当たらず、やはりあそこか? 本を見て少し手段思いつく。それと、肝心のあの男はどこに?>
数日後には、ミツヨカワから家族に書物を渡していいとの許可が下りた。
「よい事だと思いますよ、それは」
励ますように彼の肩をたたいた。
「ご家族用にこれは、と思ったご本がありましたら、お渡ししますので仰ってください」
「いつもありがとうございます」
「いえいえ」ミツヨカワは至極ゴキゲンだった。
「もう7週間、8週間になりますか……あなたの成長は、本当に驚くばかりです」
「教主様と、副教主様のおかげです。それから先輩がたに色々ご指導いただいて」
ちらとオダの顔が浮かんだ。アイツも色々ご指導下さったクチだ。
仕事は(これが仕事と言えるなら)毎日多忙を極めた。
あちこちのセクションを出入りし、わずかだが他セクションの担当者と話をする機会もできた。
だいたいが宗教の内容に関する討論やディスカッションだったが、たまに他愛ない噂話が飛び出すこともあった。
相手によっては、冗談まじりに、『特別指導』の話が出ることもあった。
いや、大きな声じゃ言えませんがね、実は私もここに来たばかりの頃にはよく特別にご指導賜ったこともありましたよ。姿勢が悪いってね、座る練習とか……いや実は私も入ったばかりで一晩中書きとりでした、教主様の御言葉をノート一冊分……私もどなられましたよ、今となってはいい思い出です。
誰も、プライドをずたずたにされるまで殴られたり傷めつけられたりした、とは言わなかったが、多かれ少なかれ似たような目にはあっているのだろう。
面白い話も聞いた。




