「ここは本当に素晴らしい所」 03
まもなく、ここに来てから3回目の面会日となった。
「元気そうだね、兄さん」ルディーの方がやつれてみえる。
メイクが自然で、傷もうまく隠れている。しかし目の下にできた隈は本物のようだ。
「私、広報担当になりました」
サンライズがすっかり影をひそめた幸せそうな男は弟にまず報告。
「教団の中をあちこち回って、教義の朗読とか説法をさせていただくようになりました」
「え、本当?」
ルディーがようやく、明るい顔になった。
「ここは本当に素晴らしい所だと、ようやく気がつきました」
かいつまんで宗教の説明をしてやる。
こんな話は退屈だろうが、ルディーもといアオキミツヒコはおとなしい弟なので、じっと聞いている。
「そうなんだ……よかったよ、兄さんのためにも」
「それに、オマエたちにも役に立つかも。今は実りがないけど……今度何かよい書物があったら、オマエとリカコにも渡していいか、聞いてみます」
ルディーは、じっと彼の目を見つめたまま答えた。
「兄さんがいいと思ったら、ボクもぜひ読ませてもらう、次回楽しみにしているから」
「ありがとう」
そう言ってからアオキは弟の顔を覗き込むようにして訊ねた。
「すみません、いろいろ苦労かけて。何か悩みがあるんでしょう?」
「いえ……」
実際は進展のない状況にいら立っているのだろう。
いざ通信ができた時のためにシヴァも支部に待機させているはずだが、まだ全然仕事を与えることができない。
ルディーは肩を落として、娑婆へと去っていった。
面談来賓室のドアがぱたんと音を立てて閉じるまで、アオキは黙ってそれを見送っていた。




