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「行ってくれないか、地獄へ」 03

 いったん話が途切れた時、サンライズは改めて、さっきから何も口を挟まず黙って座っていた、右わきの若い男に目をやった。


 日本人ではないが、どこか控えめな物腰が東洋人のようでもある。

 サンライズチーム常連メンバーのボビーに少し感じが似ている、れっきとした外国人ガオなのに、どこにいても違和感のないイメージ、変装したらどこにでもとけ込めそうだ。

 しかしもっと背は低く、がっしりしている。髪は濃いブラウンで、目の色も濃い。

 やや、とまどった目をサンライズに向けている。

 ひとつだけ、只者ではなさそうな点……顔にはいくつか大きな傷あとが並行して走っていた。片方の頬から一ヶ所などは鼻を越えてもう片方まで顔を横切っている、古い痕だった。


 いぶかしげな目線を向けていたのに気づいたのか、支部長が彼を紹介した。

「彼は、ジャカード・チームのルディーという」

 行方不明となった男の、直属の部下ということらしい。


 その男は、立ち上がって深々と頭を下げた。

 声は顔つきに似合わず、ソフトで優しい。


「お初にお目にかかります。私、ルディーと申します。この度は、私どものリーダーを探しにおいで頂けるとお聞きしまして……」


 日本語もすごくうまい。しかも丁寧この上なし。

 サンライズも思わず立ち上がり、

「サンライズと申します」丁重におじぎを返す。ビジネスマンの鑑のようなおじぎ合戦となった。

「今回、ルディーをバックヤードで使ってくれないか」

 支部長がぺこぺこしている二人を座らせて、改めてこう告げた。そこにカチハラが続ける。

「本来ならば、潜入捜査は彼の仕事なんだが」


 カチハラも、いつもならば東日本支部など『どうせ支部でしょ』みたいな冷淡な態度なのに、今日は頼みごとをする立場なせいか、やや落ち着きのない雰囲気で身を前に乗り出している。


 ナカガワは相変わらず、苦虫をかみつぶしたような顔をして腕を組んでいる。以前他の任務の際、なにかと感情的に激しく衝突したことをまだ根にもっているのだろう。

 まあ、一言もしゃべらないでいてくれるのは、サンライズとしてもありがたかった。


「入り込んだ先が、外国人が全くいない環境で目立ちすぎる。それにこの顔で……」

 ルディーの傷のことを言っているらしい。

「ある程度変装して入れないこともないが、そこで何日も寝起きするとなるとやはり変装は無理がある」

「はあ」


 何日も寝起き? 今、ものすごくやる気スイッチオフな語彙が耳に入った気がしたが、サンライズは努力して表情を変えずに訊く。


「あの……何日くらいの目安なんでしょう、その仕事」

「そうだね」

 中尊寺は、相変わらずのんびりした口調だった。


「やっぱり、一ヶ月か長くて二ヶ月はかかるだろうな」

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