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「そのまま前を見て」 03

 後ろから気をつけながら途切れ途切れにこれだけ質問する。

「まず一つです、他のセクションに探したい人がいる時、どんな方法で会えますか?

 次、お茶に入っている薬物の名前や量、ご存知でしたら教えてください、三つ目、オリエンテーションの時反抗したワタナベという人が『もう入った』と聞きましたが、それがアナタの言う場所ですか。あとそうだ、時計もなく時間がわかるのですか?」

 土砂を捨てる所には、見張りが張り付いていて何も口をきけなかった。

 帰りは、今度はアオキが前になる。

 ジョウガシマは、考えながら答えていった。

「他セクションの人は、もっと大きなポストにつかない限りは食堂で少し見るくらいですか、全体集会でステージに立つことができれば、とりあえずは見られるかもですがね。

 施設内で偶然会うことはほとんどありません。セクション長どうしでも話もできませんね。

 次に、薬ですが私は詳しくなくてすみません、催眠導入剤と精神安定剤のどちらか、または両方を混ぜるらしいです。

 あと、入ったというのは、私の言った『清め場』のことだと思います。簡単に言うと、懲罰房でして……帰ってくると廃人同然だとか。内容は噂のみで、真実を語れる人間は清め係の数人と幹部くらいでしょう」清め係とは、たぶんあの暴力集団だろう。

 ちょうどまた積み込みの場所に到着してしまった。

 意外にもジョウガシマはふり向いて

「音楽が、時計の代わりになります」

 と普通の声で答えてくれた。

 つまり、食堂では流れる音楽に合わせ、入れ替えを知らせているらしい。

 次の回では何を聞かねばならないか、直接ジャカードの事を知っているか聞くのは、やはり危険だろうか、土が乗り終わるまで足踏みでもしていたい気分だったが、ふと見ると連れはかなり消耗しているのに気づいた。

 スコップの連中も

「だいじょうぶですか?」と声をかけている。

 あまりにもジョウガシマがぜいぜいとしていたので、たまりかねたミズノが

「あの……私、足はもうだいじょうぶだと思いますので、一輪車やります」

 そして恐ろしい話の続きは、当分お預けとなった。


 夕食では、不慣れなせいかお茶は残すことができなかった。

 口のわきから半分近くこぼしてしまい、それをまた、スギヤマメガネに見られていた。

 中途半端に眠い上に、労働の疲れも重なったところへまた二人組のお迎え。

「こりない方ですねえ、アナタも」

 オダが肩をすくめて言った。

「聖なるお茶がうまく飲めないそうですね、貴重なものなのに」

 非力なアオキ、ヤケになって答える。

「あんなものが聖なるお茶なら、『お~いお茶』は究極のお茶だろうな」

 押さえつけられて、お茶を散々口に流し込まれた。

 普通のお茶だったようだが、口からも鼻からも吐きまくり、くどくどと説教されて最後には「すみませんすみません」と謝りまくった所までは案外はっきり覚えていたのだが、やっぱりものすごく眠くなって引きずられて帰ったようだった。気がついたらまた、朝がきていた。


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