「残念なお知らせがあります」 02
彼らは、アオキの腕を拡げさせ、それぞれ1本ずつを抱えるように持ち直した。
「そう言う時に、私の所属する係が仕事をするわけです、他のみな様のご迷惑にならないように。そして、ご本人様のよりよい魂の浄化のために」
「……暴力は、暴力じゃねえか」アオキも殻を脱ぎ捨てた。
「信仰心だけじゃあ動かせねえと判ったら、とたんにコレか。とんだ宗教だな」
目の前にいる男の顔は、たぶんひきつっているだろう。
「アナタは、途を見失っています」
「そのままその言葉返す」
「ここで教主様に許しを乞うてください」両側の男たちに抑えつけられ、じょじょに膝が曲がってしゃがみこむような格好になる。
「それから、私にも」
「やだね」
アオキは、挑戦的に顔をあげた。
ちょうど眠気がとれてきてしまったのがかなり残念な感じだが、やるなら今しかない。
「そうだな……」眠っていたサンライズが命じる。
スキャンはいい、とにかくシェイクだ、キーを掴め。
目の前の男に取りつこうと彼は意識を前に集中した、したはずだった。
しかし
「……」
何も映らない、そして、何も聴こえてこない。アオキは瞬間、凍りついた。
「どうしましたか? 『お許し下さい』と言えないのですか」
キーが掴めないのならば、することはひとつ。
「わかった」アオキは息を吸い込んでから、静かに言った。
「オマエらがどこまでやれるのか、見せてもらうよ」
いきなり、背骨を靴のかかとで踏みつけられた。
ぎゃっとつぶされたカエルのように床にはいつくばった所に、さらに蹴りが二度、三度、四度……
やっぱり、見せてもらわない方が良かった、とひどく後悔した。
それでも、引きずられながら帰る途中で、多分眠ってしまったのだと思う。気がついたら自分のベッドにランニングとトランクス一丁で横たわっていた。もう次の日の朝だった。
洗濯済みのお仕着が壁のハンガーにかかっており、メガネはサイドテーブルにきっちりとたたんで置いてあった。
アサダは相変わらず、変な体操をしながら
「あ、おはようございまあす」
元気な笑顔をこちらに向けた。
起き上がったアオキをみて、ぱたっと手を落とし
「だいじょうぶですか? どうしました」と聞くので
「ちょっと、腰がね……」
「腰が、お悪いんですか」夜、踏んで差し上げましょうか? ボク、よくおばあちゃんの腰踏んでやったんですよ、上手だって言われましてハハハ。
そう言いながらそのままキゲン良く歯磨きに出かけてしまった。
これ以上踏まれてはかなわない。アオキは我慢して起き上がった。




