「残念なお知らせがあります」 01
眠い、たまらなく眠い。
いつからこんなふうだったのか、覚えがない。今日そんなに疲れたのだろうか?
自分の部屋に戻ったのも、あまり記憶がない。眠る時、アサダと何か話をしただろうか、というか、アサダはちゃんと部屋にいたのかどうかも、はっきりしない。
なぜか気がついたら、2人の男にまた両腕をつかまれ、廊下を引きずられていた。
そうか、着いたばかりの時の夢だ。あれは昨日か? もう百万年前の話のようだ。
しかし手回しがいいことに、もう教団のお仕着せを着ているし、一体どうなっているんだろうか。本気で混乱している。
着いた部屋は、昨日も入ったばかりの指導室だった。少し記憶がつながった。
中に入ると、すでに1人若い男が奥に座っていた。コイツも初めてみる。
「アオキさん、お座りください」歌うような言い方だった。
自発的に席に着く前に、両脇の二人に無理やり座らされた。
「私、オダ、と申します」一応決まりだから言っているみたいな感じだった。
「残念なお知らせがあります」若い男は、端正な顔を哀しそうにゆがめている。
「はあ」眠らないようにするのが、ひと苦労だ。
「センター長が、アナタに特別指導を行うようおっしゃいました」
「特別指導?」
「はい」
「パンフレットには……あったかな?」
「ありましたか、ですよね?」アオキが黙ったままだったので、オダはもう一度
「ありましたか?」とゆっくりはっきりと繰り返した。
「だから?」切り返したとたん、オダは急にデスクを蹴り付けた。角がしたたか腹にぶち当たり、彼は椅子から転がり落ちた。
苦しげに体を折ってせき込むアオキの前にオダが回ってきた。
「私はね」ドアの前の2人に合図して、彼を立たせる。
「この教団で、特別な役目を与えられているんですよ」
手の自由が利かない彼のあごを持ち上げた。
「あぶないので、これは取りましょう」眼鏡を外されてしまった。
「誰も、暴力はふるいたくありません、しかしやむを得ない場合もあるのです。例えば……」
表情がはっきり見えないが、確かに笑っている。
「テストの最中、ずっと耳をほじったりですとか」やはり、チェックは入れられていたのだ。その場で注意せず、夜中まで罰は取っておくのか。
「言葉づかいがなかなか、直らないようなこととか」
彼は後ろの男たちに合図した。




