「教義に関わる問題です」 01
夕食までにも、細かく色々あった。
まず、セクション毎のオリエンテーション、次に屋外作業場の見学、それから教導講義。先に風呂を済ませ、ようやく食事になった。
夕食は、朝食と同じパターンのようだった。
どんな時、どんな場所にもあのスギヤマメガネはちょくちょく顔をのぞかせた。
センター長のミツヨカワもたまに、姿を現した。
そして常に、セクションとも関係のない、ただの見張り番のような男たちも、そこかしこに彼らを見ていた。
修行中の自分たちとほぼ同じ服装だが、微妙にデザインが違う。上着の丈がやや短く、ズボンは一般信者のようなアジャスタ付きではなく、ベルトでちゃんと留めているようだった。靴も白っぽいのは同じだが、外で履けるような革靴だった。
微妙な身分の差だな。彼はセクション長の言葉を聞きながら、見張りを横目でみていた。
乾杯になった時、隣にいたトリサカという男が、持った湯飲み茶わんを手から滑らせた。
「あっ」
プラスティックの湯飲みがからん、と床に当って回転し、お茶をぶちまけてしまった。
「あららら、すみません、すみません」
トリサカ、すっかりあわてている。
というのも、このお茶は教団の茶園で摘まれた茶葉を教団の工場で製茶し、更に独自の製法で数々の薬草をブレンドした特製のものだという話で、これを必ず三食で頂くことで、体の中を浄化するのに大きな役割を果たす、つまり聖なる飲料だと聞いていたのだった。
「どうしよう、どうしよう」
あまりにも慌てふためいているので、アオキが自分の茶碗を持ち上げた。
「オレの半分やろうか」
トリサカの動揺は、ますます激しくなった。「いい、いいんですダメですよ」




