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「刑務所じゃねえの?(同感だね)」 03

 その言葉に、一同「ええっ」とどよめく。

 内容は二種類、まず一つ目はアンケート。

「持病はありますか」的な健康診断を思わせる内容から、「現在までのお仕事先、部署、年収」「次のうちアナタが一番大切だと思われるものを三番まで選んで」みたいなものまでさまざま。500問くらいありそうだ。

 もう一分冊になっているのは、後で配ると言われた。ちらっと見えた感じでは、公務員試験にありそうな知能テストに近い感じだった。

 アンケートの前に『教主様のみことば』というペラ一枚ものを配られ、まず五分間じっくり読むように、と言われた。1000文字くらいか、先ほどセンター長から聞いた話とあまり変わりがない。

「アンケートとテストの前に、こちらは回収いたします」

 紙が回収された。続けてアンケートが配られる。

「お仕事先」という質問に、正直に答えてやりたい気持ちがむらむらとこみあげてきた。

 それに何だか急に耳が痒くなる。

 小指でいじっていると、近くに回ってきていたスギヤマから、また優しく「めっ」された。ちらと見ると、ずっとにこやかに見ているが、あえて無視。

 さらに耳を掻き続ける。次に見た時には、すでにスギヤマは前の方に移動していた。

 一般テストの似たようなのは以前受けたことがあったので、案外楽勝だった。

 弟と女房を悩ませてばかりいるアオキカズハルが、こんなにすんなりテストができていいものか、少し考えてからわざと間違えた答えを選んだりもしたが、最後には面倒くさくなって、もうどうでもいいや、と開き直る。

 テスト回収後、もう一度紙が配られる。今度は白紙だった。

「一番初めにお配りした、教主様のおことばですが」

 スギヤマが前に立って言った。

「覚えていらっしゃる限り、そこにお書きください。終わった方から前にお出しいただいて終了、昼食です」

 また会場がどよめいた。

 これもどこまで真面目に答えようか、かなり悩んだ。

 オレ、実は暗記得意なんだよな。かなり注意深く、たどたどしい言葉を入れながらおおまかに書いていった。

 五分ほどで適当に書き終わり、前に持っていく。なんと一番だった。

 スギヤマがにっこりと受け取った。「お疲れ様でした、アオキさん」

「……どうも」ありがとうございました、をつけるの忘れた、と思ったが別にそこまで言ってやる義理はない、とそのまま出て行った。

 それに、いつかは勝負を仕掛けなければならない。まずは細かいところで小手調べだ。

 背中に、スギヤマの視線がいつまでも刺さっているのを感じていた。


 昼食は、お祈りなしに済んだ。

 セクションでまとまることがなく、彼の分はもうすでにテーブルの端の方に用意してあった。他の新規入所者の分も近くに並べて置いてある。

 テストが終わった連中が誰か帰ってこないか、かなりゆっくり食べたつもりだったが結局、誰もこなかった。

 もしもう少し会場に残っていたら、興味深いシーンが見られただろう、と後になって知った。

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