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「刑務所じゃねえの?(同感だね)」 01

 オリエンテーションは、セクションに関係なくここ一週間に入所した新人を対象に行われるらしかった。

 ここにきてからずっと見かけなかった女性信者たちの姿もあった。

 研修室は、どこかの大会議室のように前に大きなスクリーンが下げられており、その前に長机と椅子が何列も並んでいた。

 座る場所が決められており、アオキはそれでも後ろの方だったのでありがたく席についた。

 どうも入所順で並ぶらしく、同室のアサダは二つ前の列、斜め左に座っていた。全部で20人ほどが集まってきていた。


 ここでまず、教団と教主の紹介ビデオを延々と一時間以上見せられる。

 アオキは、スクリーンの中にいる教主・テルヨカワアキラをじっと凝視した。

「私は、ある朝目覚めました……」

 最初からすっかりどこかに往ってしまった表情にみえる。

 ミツヨカワもそうだが、このテルヨカワアキラも、ずいぶんと贅肉が多い。テルヨがミシュランならば、こいつはマシュマロマンだ。マシュマロがある朝目覚めたらどうなっていたのか? 多分、珈琲に浮いていたのだろう。

「天と地が、私に命じたのです。生きよ、と。そして人々を生かせ、と」

 極彩色の光が舞い踊り、イメージのみが先行した、はっきりいってかなりタイクツな出来だった。他の連中も同じ感想が多かったらしく、後ろの方に座ったアオキからみても、がくりと落ちる首がいくつか見受けられた。アサダも何度か、船をこいでいた。


 その後、センター長のミツヨカワの講話。

「お集まりのみなさまの、心がみえます」

 開口一番、このことばにアオキは心臓がとまった。しかし、知らん顔して続きを聞く。

「みな一様に、深い悩みを抱えていらっしゃる」

 前の方の何人かがうんうん、とうなずいた。すでに涙ぐんでいる人も。なぜだ。

「人はなぜ、生きるのか。こんなにも辛いのに」

 それがこんな宗教ですぐ分かれば、本当に便利だな、いちいちアオキは心の中で突っ込んでしまう。

 ずっと聞いていてわかった。自分は本当に、宗教向きではない人間だ。


 次に、事務局から一般的な日課表について説明があった。

 あの丸メガネは、事務局長のスギヤマと名乗った。遠くからみると、こいつものっぺりと大きい。

「……このように、一週間を一つの単位として生活するわけですが、たまに、セクションごとの集会や、全セクションまとめての集会もございます。通常、セクション集会は週に一度、全体集会が月に一度程度です」

 ジャカードがもし、まだどこかのセクションで生活しているのならば、月に一度の集会で見かけるかも知れない。

 週一で屋外作業もあるという話だったので、セクションごとの活動だとは言うが、施設外から何かをみつけるチャンスでもある。

「……外部の方との面談ですが、ご希望の方は月二回まで可能ですが、いくつかご注意点があります」

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