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「十分だよ、いや十分です」

 食事に呼ばれると、食堂の隅だけ照明が残してあってテーブルの端に一人分の御膳があった。

 給食のトレイみたいなクリーム色のお盆に、皿に入ったおむすびが三つ、汁もの、漬物が数切れ、野菜の茹でたものが少し載っていた。

「夕食時間がすでに終わってまして……このくらいしかご用意できませんでした」

 付添いの大男が優しい声で謝った。

「明日の朝食から、皆さんで召し上がっていただきますのでもう少し普通のものをお出しできます。すみませんが今夜はこれで」

「十分だよ」

 先ほどのアサダの言葉を思い出していた。オイシカッタデス、そうか、とにかく丁寧語でしゃべるんだったな。

「十分です、ありがとう、」だからもう一言「ございます」

 相手はやや満足したように、一歩後ろにひいた。

 特に美味いでもマズイでもなく、すんなりと食べることができた。

 食える時にはちゃんと食っておかないと、と普段よりよく噛んだ。


 部屋に帰ると、アサダはすでにベッドに入っていた。

 すでに夜もかなり更けているのだろう、もともと静かな施設内だが、すでにどこからも話し声も聞こえず、人影もみえない。

 アサダは、とみると安らかな寝息をたてている。

 眠っている時の方が、普通に幸せそうにみえた。

 純朴な青年が、世の中の汚いものごとに晒されずにそのまま歳をくってしまったような顔だった。

 どうしてオマエさんはこんな所に入ったんだ、寝顔に語りかけた。

 変わった人間は世の中にたくさんいるもんだ。まあ、オレもそちらから言わせれば、十分変わったヤツなのだろうが。


 ジャカードにはいつたどり着けるのか、先が長そうな気がして長い吐息をつく。

 まだ一日も終わっていないのに。


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