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「いつ頃帰れるんだよ」 03

「あと、お座りになる時は、ご自分のお部屋でしたらいいのですが……」

 柔らかくも非難めいた目を、彼の方に向ける。

 確かに、椅子に斜めにこしかけて、足を組んで片手は背もたれにひっかけている。

「そうですね、まっすぐお座りください」

 ヘラヘラした顔で座り直しながら思う。道理でコイツらは、どこでも行儀がいいのか。

「お部屋に入ってからのご注意ですが」

 まだあるのか、みたいな顔になってしまった。

「同室の方と仲良くされるのはもちろん」

「え、」

 予想していなかった。マズイかもしれない。「相部屋なのかい?」

 丸メガネは、また幼子を「めっ」としかる幼稚園の先生みたいな笑顔になった。

「ああ……つい癖で、ええと、相部屋なのですかい? 誰かと」

 江戸っ子じゃあるまいし。自分でも思ったが、とりあえず答えてもらえた。

「ええ、つい最近入られた、アサダさんという方がいらっしゃいます。どうか仲良くお願いしますね。もちろん……」

 少しだけ丸メガネの表情がかげった。

「もちろん、会話していただくのは全然かまいません、お互いの宗教観を確認しあう場として、教主さまも個人の会話は重視しておられます。ただし」

 丸メガネが蛍光灯を反射して、いやな光を放った。

「修行前の過去につきましては、お互いにお明かしになりませんように」

 ため息をつくようにつけ加える。

「どなたさまも、何かと辛いものを抱えていらっしゃいます。それにそういうものを吐き出す機会は、他にございますので」

「はい、分かりました」

 とりあえず、殊勝にそう返事をしながらも心の内では毒づいていた。


 過去について話すな、だと。ふざけんな。

 これからの計画についても、絶対話せるものか。



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