表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第1ステージ:市街
9/200

オラクル Ver. ヘラ -2-


『そなたら。わらわの神殿に何用で参ったのじゃ』


 アヤノはおそるおそる目を開けた。もうまぶしさは感じない。あたりを見渡すと、いつの間にか絨毯敷きの広間のような場所にいた。

 そして部屋の中心には、まっ赤なソファにゆったりと身体を預ける女性の姿があった。自身は薄紫の丈の長いドレスを身にまとっている。結い上げられた黒髪に、キツそうな紫色のまなざし。人のカタチながら、異様なほどの迫力に圧倒される。

「第1ステージの守護神、ヘラだよ。ギリシャ神話では結婚を司る女神だ」

「何度見てもえらそーな態度してんよなー」

「主神の奥方ってポジションだしね」

 ショウはぽんとアルの頭に手を置いてから、ヘラに向き直った。


「ヘラ。僕達は“オラクル”に挑む」


『ほう……試練を望む者か』


 “オラクル”の発音に反応するんだ、と小声でアルが教えてくれた。そのとおりに女神は身を起こし、こちらを見据えた。

 とはいえ紫色の目はどこを見ているのかはっきりせず、少し気持ちが悪かった。


『恐れを知らぬ勇士達よ。なれば、わらわの庭へ行くが良い。

 今、庭は荒らされておる。

 その元凶たる“獣”を除いてくるがよいぞ。

 わらわの憂いを晴らすことかなえば、そなたらに報賞を授けよう』


「報賞ってのが、次のステージの“クレイス”な。オレらはもう持ってっけど」

「持ってる人は何ももらえないの」

「かわりはそこそこ高額のレプタだ。あとは、条件さえ満たせば――」


『ではここに、扉を開こう。いつでも出立するがよい』


 ぐにゃりとヘラの姿が歪んだ。まるでCGのように、見る間に小さな扉の形をとる。

 色は紫。第1ステージの“クレイス”についている石と同じだ。

「ここから先がオラクルエリアだよ。準備をしたら行こう。アヤノ、能力値タレンド

「ん」

 ショウに教わりながら操作を終える。全数値を“攻撃力”に。

「結局そうなるんだ……」

「まあまあ、かてーこと言うなよ」

 2人の会話を聞きながら、アヤノはノブのない一枚板の扉に手を置いた。続いてアルが。そしてショウも。それと同時に扉は淡く発光を始めた。

「さあ――飛ぶよ」

 ショウの表現は的確だった。意識がふわりと浮いたような感覚に続いて、紫色の光がはじけた。

 ややあって、とんっと地面に足が着く。アヤノはまだ浮ついたような意識を頭を振って追い払った。

「……うわ」

 そして思わず声を漏らす。周囲は通常エリアと同じ「町」には違いない。ただ、異様だった。のっぽの建物のとなりにアヤノの身長ほどの低い家があったり、壁がななめに傾いていたり。統一感のないぐちゃぐちゃの町並みだ。その上見上げた空の色は、紫色を帯びていた。

 なんというか、かなり、気持ちの悪い光景だった。

「あーこの空! 『来た!』って感じすんよなー!」

 はしゃいだような声を上げるアルを横目に、ショウは剣を抜いた。すぐにもモンスターが現れるのかもしれない。アヤノもショウに倣って鞘を払った。

 とそこで、アルがショウを見返った。

「なーショウ! せっかくだしよ、“あれ”、狙ってみねーか?」

「……あれか」

 ショウは考えるそぶりを見せた。話の見えないアヤノは眉をひそめた。

「あれ?」

「“紋章クレスト”! 各ステージのボーナスアイテムだ! オレ先のステージに進むの優先したから、まだ1個も持ってねーんだよー」

「クレスト……」

「簡単に言うと、時限式のパワーアップアイテムってところかな。条件を満たして“オラクル”をクリアすれば、“鍵”といっしょにもらえるものだよ」

「条件って、どんな」

「マップを見てみて」

 言われたとおりにマップを開く。そしてアヤノはすぐに気づいた。

 見取り図の右下。目立つ赤い字で『30』と表示されている。

「オラクルエリアの敵の数。第1ステージは30匹だね。それを全部倒してからクリアするのが“紋章クレスト”獲得の条件なんだ」

 アヤノはここまでの道のりを思い返した。「特訓」と銘打ってアヤノが倒してきた数は6。それだけでもずいぶんと時間がかかった。その5倍の数を、今から相手しようとしていることになる。3人でとはいっても……どうなのだろう。

 そんなアヤノの思案をよそに、アルもショウも気楽そうに笑い合った。

「心配すんな。オレとショウがいりゃあ楽勝だ!」

「楽勝かどうかはわからないけど……まあ……」

「お」

 ふとアルがあらぬ方を見た。

 その理由は、聞くまでもない。

「ははっ! 来たぜ!」

 ゆらりとのぼり立つ陽炎。それはすぐ、3つに分裂する。それを見たショウが肩をすくめた。

「やれそうならやってみようか。僕もアルも、前に来たときよりレベルを上げてるわけだしね」

「おっしゃー!!」

「アヤ。ここの敵はだいたい群れになってくる。それと外のヤツより体力が少し高いから、そこは注意して」

「わかった」

 アヤノがうなずいたのと同時に、ガチャリとアルの銃が鳴った。ショウも切っ先を前方へ掲げる。青い目が、鋭く敵を見据えた。


「よし。それじゃあ、始めようか?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ