↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第6ステージ:船舶
PR
88/200

オラクル Ver. ヘルメス -1-



 ――君にはまだ届かない

 ――僕の声が 届かない


 ――どうしたらいいだろう

 ――どうしたら届くんだろう

 ――プレイヤー、ダンテ



 ――アヤノ、ユリウス

 ――君達となら……そろそろ会えるだろうか……?




            * * * * *




「……どうした。何かあったのか」


 こちらへ戻ってくるなり、ダンテは先ほどのショウと同じ事を言った。それくらいに嫌な空気なのはショウ自身も感じていた。

 原因というか発端はわかっていて、どうしても意識が――視線がそちらへ向かう。

 黒い眼は正確にそれを追い、すぐユーリに行き着いた。と思うや興味を失ったように戻っていく。ダンテの表情は「彼については諦めた」とでも言いたげだった。

「アヤノとアルの魔法はどうだ」

「なんとなく様になってきたってところかな」

「実戦に足る習熟度ではなさそうだな」

「でも、僕もうっかりしてたけど、どっちにしろまだ乱発はできなかったよね……まだランク上げてないしゲージも少ないし。ま、基本はいざというときの非常手段でいいと思うんだ。特に対モザイクの」

 ダンテはしばしの沈黙の後、「そうだったな」とうなずいた。非難するように渋く眉根を寄せ、腕を組む。

「運営はまだあれの対策をとっていないのか」

「……出現頻度も低くて、なかなかサンプルが採れなかったんだ。それに、途中で僕がコレだし」

「ショウ」

「ごめん。僕にはこれ以上のことはなんとも言えない」

 ショウは“困ったような”顔をして見せる。はぐらかしているのはすぐにわかったろう。しかし追求はそこまでだった。察してくれるのは本当に助かる。

 その代わりというわけではないだろうが、ダンテは画面を開きながら手招きした。

「何かメッセージ?」

「そうだ。今回はだいぶ短いが。――これだ」


『ショウ。お前の様子は今のところ変わりない。最近はいろいろと噂が飛び交っているようだから、掲示板もまめにチェックしておくといい。 リョウジ』


 ショウは叔父からのメッセージにさっと目を通した。それからもう1度、後半部分だけ目でなぞる。

 ――了解だよ。おじさん。

 内心でつぶやいて、すぐアヤノ達に向き直る。

「新しい情報はないみたいだ。こっちはこっちでそろそろ進めていこうか」

 瞬間、アヤノとダンテがそれぞれ目を泳がせた。気持ちはわかる。しかしいつまでも保留というわけにいかないのだ。

「第6ステージに戻るんだな!」

「うん。行けそうなら“オラクル”まで」

「……この上は、さっさと駆け抜けるのが逆に吉なのかもしれない」

 ダンテが唸った。ショウは思わず笑って、ダンテとアヤノの肩を順にたたいた。

「大丈夫。なんとかなるよ」

「うん……」

「ああ……」

 あいかわらず自信はなさそうな2人だが、目は前を向いている。この様子なら行けるはず。というか、そう信じるほかない。

 ショウはセーフティエリアの方を、その中央にある“扉”を透かすように見据えた。つられたように他の視線もそちらへ向かう。ひとり、ユーリを除いて。

 ふと灰色と目が合うと、妙にきつく睨み返されてしまった。

「なあに」

「いや?」

「そ」

「……ねえ、ユーリ」

 どうにも様子がおかしいので、ショウは試しに尋ねてみる。

「次に自分の話をしてもらうのは誰がいいかと思ってたんだけど。君はどう?」

「別にいいわよ」

 即答だった。それはいいんだと首を傾けたところで、ユーリは唇の端を上げた。

 嘲笑、のように見えた。

「だけど大したことしゃべらないわよ? プライバシーはしっかり守らないといけないし、ねぇ?」

「うん。それはもちろん」

 ユーリはそれきり口を閉じた。

 そんな彼からは、まるで目の敵にされているような空気を感じる。――慣れた感覚だ。何があったかはまだわからないが、自分にとっては大きな問題ではない。

 指示にさえ従ってくれるなら。無事に現実世界へ戻ってくれるなら、嫌われようと憎まれようと、どうでもいいことだった。




            * * * * *




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。